LIXIL社長が語る"健全な"会社の壊し方 GE出身の切れ者経営者はどう会社を変えたのか

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――その3つのトップを、藤森さんはすべて社外から連れて来られましたね。内部人材の登用はないのですか。

もちろん大勢登用していますよ。ただ、真の変革は破壊的なものなのです。いったん何かを破壊しないと、次のものが育たない。そういう意味では、下から上がってきた人をいかに変えようとしても、きっと変わらない。

そもそも私は、変革を欲している会社でなければ行く意味がないと思っていました。社長になって期待されているものが変革ではなくて、株価をちょっと上げればそれでよし、では面白くない。

前会長の潮田洋一郎氏(現・取締役会議長)が私を選んだのも、いわば破壊的改革です。この会社を本当に変えようと思わなければ、自分が退いて社長を外から連れて来ようなんて考えませんよ。

――それを創業家2代目で判断するというのは、なかなかできませんね。

自分で経営をできなければ、できる人に託す。こんなことは、自分でやる以上に度胸がいりますよ。

――ある種、自分自身を選別して捨てたわけですよね。

その通り。

「さすがGE。でもウチにはできない」

――普通、創業家一族はオーナーシップと経営が混然一体としている場合が多いでしょう。

多い。潮田氏がすごいのは、経営に執着しないところ。将来を考えると、必ずしも自分が経営権を持っていること自体がベストではないと分かっている。普通はオーナーシップが3%以下に下がるなどしてほぼ自分に権限がなくなっても、経営にしがみついている人が多いわけですよ。そういう会社はどこかで誰かがストップをかける必要があるかもしれません。

それに比べると、潮田氏は誰かに迫られて引退したのではなくて、自分で先を読んで判断した。そこに彼のすばらしさがあると思うのです。

――潮田氏は自分が経営トップの時に「ガバナンスというのは、要はトップを辞めさせられるかどうか」という非常に鋭い言葉を残していますね。

そういうことですよ。だから、僕なんかは毎年更新で、いつでも辞めさせられるわけです(笑)。

――日本の社会に貢献したいと思ったのもLIXILに来た理由の1つだそうですね。

日本に帰国して、経済同友会に入ったのです。日本IBMの北城(恪太郎)さんに勧められて。で、経済同友会でいろんな意見を言ったわけですよ。「GEは、アメリカはこうですよ」と。でも、「さすがGE。でも、うちではできないな」と、必ずこうなる(笑)。

でも私は、「いやできないじゃなくて、やらないだけじゃないか」と思った。そして、それなら私がやってみせようじゃないかと。自分がやって会社が変われたらほかの人にはもう何も言わせないぞ、という感じ。それが成功したら、日本の社会の活性化とか新陳代謝とか、新しいエネルギーが生まれてくるのではないかと思います。

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