部長昇進を望まない人がジワリと増えている訳 20代金融マン「重い責任、割りに合わない」

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大手企業の課長級なら、年収1000万円をゆうに超えるので、とくに物価が安い地方では、生きていくうえでまったく不自由しません。一般的な課長の仕事は、上層部の命令に従って部下を管理することが中心で、仕事の難易度が低く、失敗してもさほど責任を問われません。

一方、部長になると、権限が大きくなり、報酬もそれなりに増えますが、部門を運営するうえでの責任も苦労も格段に大きくなります。とくに近年は、市場が成熟化、競争が激化、技術が高度化、メンバーが多様化し、部門の成果を実現するのが難しくなっています。

そのため多くの課長が、「ずっと課長のままでそこそこの給料をもらって平穏無事に生活できるなら、無理して部長になって苦労を背負い込む必要もないな……」と考えるのも仕方ありません。課長が部長を目指さないというのは、課長の立場で考えると、至って合理的な判断と言えるでしょう。

リーダー不在を食い止める4つの対策

もちろん、会社勤めをしていて何を幸せと感じるかは、人それぞれ。昇格して責任ある仕事をし、たくさんの報酬を得ることが幸せだという人もいれば、そこそこの報酬で安定した生活を送るのが幸せだという人もいます。どちらが正しい、間違っているということはありません。

ただ、企業としては「ずっと課長のままでいたい」という従業員が増殖し、リーダー不在が深刻化するのを、黙って見過ごすことはできません。以下の4つの対策を実行したいところです。

1.役職定年の制度を廃止する
2.信賞必罰を徹底する。同じ職位に滞留するのは最長5年とし、5年以内に昇格または降格する
3.役職手当に役職ごとで大きな差を付ける
4.降格した場合でも、業績を上げたら再度柔軟に昇格させる(敗者復活)

このアイデアをある機械メーカーの社長に話したところ、「まあ、理屈はよくわかるんだけど、これをやったらわが社では人事の秩序が崩壊しちゃうなぁ」と言っていました。「人事の秩序」を第一に考えて問題ないという余裕のある企業はともかく、リーダー不在に危機感を持つ企業は、4つの対策を検討・実行してほしいものです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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