知ったらびっくり!?公的年金の「3号分割」 「女性と年金」の未来はどうなっていくのか

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とはいえ、「モデル世帯」、「モデル年金」という言葉は、変えたほうがいいとは思う。モデル年金は、1985年改革までは、夫に支給される厚生年金(報酬比例年金+定額部分+加給年金)で使われていた。1985年に定額部分を夫婦2人分とみなすようになってからは、モデル年金は、片働き世帯夫婦2人分の基礎年金と夫に支給される報酬比例年金の合算額と説明されるようになった。そしてはるか昔に、モデル年金の「所得代替率50%維持」が法律に書かれてもしており、その確認は年金局の義務となっている。

公的年金の給付水準を、制度創設時から長期間にわたって定点観測していくためのベンチマークとしてモデル世帯、モデル年金が使われてきたわけだが、モデルが「模型」と解釈されるのならばいいが、モデルを「模範」と理解されるとなると、それは実態とはニュアンスが違うものになる。

そこで、厚労省年金局は、何とかして定点観測のためのベンチマークとしての年金を、「標準年金」と呼びなおして普及させようとしてきたのだが、メディアにさえ、そうした努力はなかなか伝わっていないようである。ということで、みんなでがんばって、男性の平均賃金を得る夫がいる片働き世帯のベンチマーク年金なんてものは「標準年金」と呼んであげよう!

老後設計を担う社労士やFPへの期待は大きい

そして、もし、あなたが社会保険労務士やファイナンシャルプランナー(FP)ならば、2019年財政検証関連資料(16ページ)の中のどこに顧客が位置付けられるのかを確認しながら、ひとりひとりの老後のライフプランの相談にのっていけばいい話である。そうしたリテラシーは、一部のメディアには期待できそうにないので、よろしく。

権丈 善一 慶應義塾大学商学部教授

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けんじょう よしかず / Yoshikazu Kenjoh

1962年生まれ。2002年から現職。社会保障審議会、社会保障国民会議、社会保障制度改革国民会議委員、社会保障の教育推進に関する検討会座長などを歴任。著書に『再分配政策の政治経済学』シリーズ(1~7)、『ちょっと気になる社会保障 増補版』、『ちょっと気になる医療と介護 増補版』など。

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