新型コロナ対応「日本モデル」とは何だったのか コロナ民間臨調「調査・検証報告書」の中身

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内閣危機管理監を議長とし、3人の副長官補と、内閣官房の審議官を兼務する厚生労働省の医務技監の計4名が副議長を務める体制が構築され、内閣官房の新型インフルエンザ等対策室・国際感染症対策調整室が事務局の中心を担った。2月中旬にはそれまで厚労省の助言組織として位置付けられていた専門家チームを事実上移管し、同対策本部の下に設置し直した。

3月6日に西村康稔コロナ対策担当相が新型コロナウイルス感染症対策の担当大臣に任命され、同月中旬に特措法が改正されると、同対策本部は特措法に基づく組織として正式に位置付けられ、新たに設置された新型コロナウイルス感染症対策推進室・対策本部事務局がその事務局機能を担うようになった。さらに病床や物資の確保などの重要政策については和泉洋人首相補佐官の下に複数の各省横断のタスクフォースが組まれ、細部まで指示を徹底した。

正式な本部組織以外の場でも、重要案件については、官邸は非公式に積極関与した。2月3日にダイヤモンド・プリンセス号が横浜沖に到着した際、船内の感染拡大を窺わせる初期検査結果を受け、加藤勝信厚労相は官邸に対して直ちに支援を要請した。それ以降、菅官房長官を中心に、連日連夜都内のホテルに防衛省や国交省など関係省庁の幹部クラスが集まり、ダイヤモンド・プリンセス号への対処に関する方針検討と状況把握にあたった。加藤厚労省は「検疫は厚労省だが、港は国交相、地方自治体は総務省、防衛省、クルーズ船なので外務省など省庁横断的な対応が必要だった」と官邸のサポートを仰いだ経緯を振り返った。

各省から「エース級」と呼ばれる人材を招集

危機においては、平時と異なる機動的な人員配置が求められる。感染拡大に伴い内閣官房の調整機能が質的にも量的にも急増する中で、新型コロナウイルス感染症対策推進室の樽見英樹室長(前・厚労省医薬・生活衛生局長)をはじめ各省から「エース級」と呼ばれる人材が急きょ集められた。

内閣官房幹部は「常に一線級の人間をそろえておくわけにはいかないので重大危機になってから集めるしかない」と危機時における柔軟な人員配置の重要性を強調する。

司令塔構築の過程を振り返り、政府高官は「得体の知れない感染症。武力事態とはまったく違った」と述べ、想定外の事態の中、手探りでの試行錯誤の連続だったことを明かした。

他方、官邸によるトップダウン型の意思決定が、実際に執行を担当する現場との認識のずれや、政策執行のインフラの弱さにより思い通りの内容またはスケジュールで実施できなかった場面も少なくなかった。

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