マグロを食べる人の激減で損害被る人々の苦難 コロナで打撃、豊洲市場や飲食店など回復遠く

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9月8日、 世界最大規模を誇る日本のマグロ市場が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による大打撃にあえいでいる。写真は豊洲市場のマグロ卸売業者「稲良商店」の天野基三雄氏。8月撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

[東京 8日 ロイター] - 世界最大規模を誇る日本のマグロ市場が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)による大打撃にあえいでいる。水産物を扱う広大な豊洲市場の卸売業者らやマグロ料理の飲食店は事業の存続を賭け、待ったなしの対応を迫られている。

緊急事態宣言が5月末に解除され、各企業は経済活動がもっと回復するものと期待していた。だが株主総会や結婚披露宴などの大規模宴会は引き続き見送られており、日本人の多くはまだ外食に腰が引けている。

大型イベント自粛で注文激減

パンデミックによりイベント用の注文が壊滅、鮮魚、特に「寿司ネタの王様」と称されるホンマグロの需要は低迷している。政府統計によれば、7月のマグロの価格は前年同月比で8.4%低下。鮮魚全般の価格が前年比1.5%低下しているのに比べ、はるかに急激な相場下落である。

東京・神田で「鮪のシマハラ」を営む島原慶将氏(47)は、「今月8月は、去年の8月に比べると60%くらいの売り上げダウンになると思う」と話す。

1年前に自分の店を開業した島原氏は、来客数の低下による打撃を相殺するために、7月に箱詰めした冷凍マグロのオンライン販売を開始した。

これまで、赤身2サクが入った1箱5500円の商品に約200件の注文が集まった。9月末には、さらに高価な中トロが入った1箱8500円の商品を販売開始する計画だ。

高齢の家族に送るために購入してくれる顧客もいるものの、それ以外の顧客にとっては、冷蔵庫で数時間放置するという面倒な解凍プロセスが壁になっている。

世界最大の取引高を持つ豊洲市場で働く、マグロ卸売業者「稲良商店」の天野基三雄氏(46)は、家庭での消費は増えているものの、それ以外で失われた分を取り戻すには十分ではない、と話す。

天野氏によれば、緊急事態宣言の解除以来、同氏が扱う魚に対する飲食店からの需要はやや回復したものの、大型イベントや、東京・銀座などの高級料理店からの引き合いはなかなか戻っていないという。

結婚披露宴や葬儀などの会食の低迷による打撃は深刻だ。本来なら1件でマグロ30~40キロという大口注文が期待できるからだ。寿司屋や居酒屋からの注文は、それぞれ約10キロや6キロといった小規模に留まることが一般的だ。

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