米大統領選後起こりうる驚愕の4つのシナリオ 「ハリス副大統領候補」で民主党は本当に優位か

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その結果、前述のラスムセン調査では、ハリス氏が確定した直後の12日の調査で、バイデン氏とトランプ大統領の支持率の差は再び6%まで拡大した。ハリス氏の選定は、一定の効果があったことになる。

実は中国もトランプ選対もハリス候補を喜んでいる?

同じラスムセンの調査では「59%のアメリカ人が、バイデン氏は勝利しても、最初の4年の任期を全うしない」と回答している。そこで問いたいのは、その場合、自動的に大統領に昇進することになるハリス氏に弱点はないのか、ということだ。

まず、ハリス氏が選ばれたことをいちばん喜んだのは中国ではないか。そして2番目に喜んだのは、トランプ大統領の選挙チームだろう。なぜなら、ハリス氏は、コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼ばないようにする法案を自分が中心となって提出しているからだ。

そしてそれは、米中関係が悪化する中、トランプ陣営がハリス氏を攻撃する材料になる。それでも、前回のコラム「トランプ再選可能性は『黄信号』へ改善している」では、トランプ大統領の再選信号は赤色から黄色に改善と紹介した一方、青信号にはならないとしたが、その考えは変わっていない。最大の理由は、2016年のトランプ勝利の立役者の1人、スティ―ブ・バノン氏の「反中プロパガンダ」が、今のところ、選挙戦という意味ではほとんど効果を見せていないからだ。

そう判断している理由は、以下による。今、この国では「BLM」(ブラックライブズマター)やアンテイファ(反ファシズムを源流とするグローバルな組織)の集団が圧倒的なデモ行進をしている。一方で、バノン氏ら対中国強硬派がコロナウイルスから香港人権問題までをからめて激しく反中運動を展開していても、アメリカ人の有権者がそれに呼応して中国大使館の前でデモをする光景は、知る限りで見られないからだ。

それはそうだろう。いくらアメリカ人の扇動家が、中国の政治体制を批判し、中国人自身による共産党支配の内部崩壊を促したところで、中国は過去30年で中間層が(恐らく)人類史上最速の速さで豊かになった。30年前は、中国では庶民が自由に外国へ旅行に行ける時代が来るなど、想像できなかったはずだ。しかも、経済だけではない。「監視社会だ」、などと揶揄されても、今では政権批判さえしない限り、昔から比べればそれなりに自由だ。

一方、自由主義を標榜してきた覇権国家のアメリカはどうだ。冷戦に勝ち、単独覇権を達成した後の30年、中間層にまで恩恵があった期間はせいぜいビル・クリントン元大統領の時代までで、その後は恐ろしいスピードで中間層は疲弊していった。その状況で、余裕がなくなった同国の有権者に、香港の人権問題を煽ったところで、核心的な選挙の争点にはならない。 

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