「週4時間だけ働く」生活を編み出す方法 “お粗末な生活”から抜け出した、人気作家に学ぶ

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誰が読んでも思い当たる節があるだろう。そして、それならば20%を取り除けばいいのだとやる気にさせるのが、この本の特徴だ。では「週4時間だけ働く」には、具体的にどうすればいいのか。

まず、目標を定めること。どんな生活を送りたいのか、何を達成したいのか。上司や客に気を使って給料をもらい、それで高級時計を買いたいのか。それとも自分の夢があるのか。また夢を実現するのに失敗したら、最悪、何が起こるか。最悪の事態となっても、夢のためには大したことではない、となるかもしれない。あるいは、そこで多少の修正が必要になるかもしれない。

頭を悩ませる客を切る決断も

『「週4時間」だけ働く。』は日本語でも出版されている

次に、無駄を取り除くこと。肝心の生産的作業をやり遂げるために、メールや電話には応えないことも必要だろう。マルチタスクは禁物。前夜のうちにやることリストを作って、朝から全力でこれに取りかかるのだ。

無駄と言えば、フェリスの場合は、頭を悩ませていた客を切ったことで、時間と気持ちの余裕ができたという。客にも無駄がいるという思考の転換はすごいが、それが功を奏するケースはけっこうあるだろう。

いずれにしても、毎日4時には仕事を終え、毎週木曜日には1週間の作業を終えているのが理想的らしい。金曜日は出勤してもいいが、それは自己開発のために使うべしという。本当にうっとりするほど理想的な考え方だ。

そして、収入は自動化する。彼の場合は、スタートアップへのアドバイスの代わりとして受け取った株や投資が、毎年何100万ドルという資産を生んでいるという。うらやましいかぎりだが、労働ばかりしていると、不労所得という別の道があることすら忘れてしまうと、心に刻むことだ。

丸1カ月の休みを取れる生活を、老いる前に

そうして取り戻した時間は、自分を解放するために使う。「ミニ退職」とフェリスが呼ぶのは、たとえば数カ月ごとにまるまる1カ月の休暇を取るような生活を、年寄りになってしまう前に始めろということ。そして、新しいスキルを取得し、新しい世界を開拓する。ダンスを習ったり、料理をマスターしたり。フェリスの場合は、どうもこちらのほうが忙しくなりすぎているようではあるが。

自己啓発のようでいて、精神論や効率一辺倒でないのがフェリスの特徴だ。たとえば、少ない時間で仕事をこなすといっても、それは単純に効率化を図るのではなくて、やったことの効果を高めることに主眼を置くという。

実は、われわれが最もイノベーションをしたいのは、自分の生活や自分自身。そしてフェリスこそ、自分のイノベーションを続けるマニアなのである。

瀧口 範子 ジャーナリスト

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たきぐち のりこ / Noriko Takiguchi

フリーランスの編集者・ジャーナリスト。シリコンバレー在住。テクノロジー、ビジネス、政治、文化、社会一般に関する記事を新聞、雑誌に幅広く寄稿する。著書に『なぜシリコンバレーではゴミを分別しないのか? 世界一IQが高い町の「壁なし」思考習慣』『行動主義:レム・コールハース ドキュメント』『にほんの建築家:伊東豊雄・観察記』、訳書に『ソフトウェアの達人たち:認知科学からのアプローチ』(テリー・ウィノグラード編著)、『独裁体制から民主主義へ:権力に対抗するための教科書』(ジーン・シャープ著)などがある。

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