見逃し配信「TVer」はYouTubeの敵になれるのか 株式会社化でテレビ局が挑む動画配信の成否

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確かにTVerはちゃんとした番組の中できちんとCMを見せる場だと言える。そこを評価してもらえるか。値付けを妥当と感じてもらえるか。営業手腕が問われそうだ。

TVerは今後のテレビ局のさまざまなネット配信の共通プラットフォームとなる。いま在京キー局の同時配信、つまり放送がそのままリアルタイムでネットでも視聴できるサービスをどの局がいつからやるか、情報が乱れ飛んでいる。いずれにせよ同時配信の受け皿はTVerになるともっぱら言われているのだが。

「同時配信する、しないは放送局の考え次第で、あくまで、決めるのは放送局です。ただ、やると決めたときにできるコンディションがないと、動けなくなっちゃう。民放キー局が秋から同時配信をするという記事を見ました。あくまで噂ですが(笑)。その時に僕らが間に合わないからYouTubeでやろうとなったら本当に情けないので、そうならないような準備はしていくつもりです。難しいと思うけど、来年の4月に全国の127局から同時配信やりますと言われたら、じゃあ127局の同時配信を見ることができるプラットフォームを作ってありますからどうぞご利用くださいと、言えるのが理想だと思ってます」(龍宝氏)

言われて気づいたが、同時配信の実施はTVerが決めることではない。各局の要請に応える立場だ。ただ、いざとなったらローカル局の要請にも対応できる体制を整えたい、との言葉には、民放全体の同時配信の受皿となる覚悟があると受けとめた。

テレビ視聴者の「見たい」を実現する

また、現状のTVerはドラマやバラエティーの見逃し配信が中心だ。ひとりのユーザーとしてニュースも見たいのだがと言ってみた。

「そういう見る側の要望を実現させるために今回この組織を作ったのだと考えていただければ、と思います。お客さんがニュース見たいんじゃないか、とわかればニュースはなければいけないものになると思います」(龍宝氏)

現時点でニュースをTVerで扱うという議論にはなっていないが、ニーズがあると判断すれば動くということだ。ただ、ニュースの配信をTVerでまとまってやるとなると、ハードルが高いのは想像がつく。5系列あるうえに、各地のニュースはキー局のものではないので、ローカル局に打診する必要がある。ルールを決めたり、了承を得たりは相当大変そうだ。

「やるとなったら、コンテンツを出していただくよう、放送局にお願いするということですけどね。ただ、この体制を作るにあたって放送局はそういうことも含めて乗り越えるぞと決意した前提ですから、ある程度の協力はいただけると期待しています」(龍宝氏)

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