不祥事再発防止へ、クロネコの"奥の手" ヤマト運輸が導入した新車両の実力とは?

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ヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸は4月22日、「クール宅急便」の積載量に応じて車内の冷凍・冷蔵スペースを可変できる新型車両を公表した。お中元シーズンを迎える6月末までに、第1弾として57台を全国に導入する予定だ。

新型車両は3つの特徴を持つ。

1つは、保冷スペースの間仕切りを変えることで4パターンのレイアウト変更が可能な点。固定式だった従来の車両に比べ、最大で約4倍の容量(6374リットル)に拡大できる。

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内部の間仕切りを移動すれば、4パターンのレイアウトを作れる

2つ目は、エンジン停止時に蓄冷板が保冷スペースを冷やし、庫内温度の上昇を防ぐ点。駐停車時間が長時間化する地域で効果が期待できる。

3つ目は、物流拠点間の幹線輸送で使用するコールドボックスも積載可能な点。これにより、輸送途中の仕分け作業が簡略化できる。

ドライバーの作業性向上にも工夫を凝らした。荷物の持ち運び時に問題となる「車高」を従来の運搬車と同程度にした。また、女性でも簡単に間仕切りを移動できるよう見直した。今後は営業店からの要望に合わせて新型車両を増やしていき、「通年で購入するクール宅急便車両のうち、3分の1程度は新型車両に切り替えたい」(福田靖・構造改革部長)としている。

業績下方修正でも再発防止を優先

ヤマト運輸では昨年10月、クール宅急便の“常温管理”の実態がビデオ撮影による内部告発で発覚。翌11月に不祥事に対する実態調査と再発防止策を発表した。新型車両の開発は、この再発防止策の一環として現場の声を取り入れる形で11月から着手した。

クール宅急便の杜撰な温度管理では、車両面以外にも、営業店での仕分け作業時に問題が発生したケースが多かった。店内の冷凍・冷蔵設備の容量や蓄冷材など機材の不足にも課題が見えた。これについては、営業各店の実態に合わせて順次、設備・機材面での追加投資を実施。「再発リスクを意識して過剰に対応した面も」(山内雅喜・ヤマト運輸社長)あり、コスト増を理由にヤマトHDの2013年度の業績見通しを従来の営業増益から営業減益に下方修正したほどだ。

設備面の対策には一定のメドが立った。今後求められるのは、作業人員による就業モラルの徹底だ。全国の品質指導長(昨年12月時点で157人)や営業店ごとに任命したクール宅急便作業リーダーからの指示で、全作業員にサービス水準の順守を徹底できるか。お中元シーズンを控えて人手不足が深刻化する中、適正な人員配置や人材の早期戦力化など、同社の管理能力の真価が問われそうだ。

鈴木 雅幸 東洋経済 記者

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すずき まさゆき / Masayuki Suzuki
2001年東洋経済新報社入社。2005年『週刊東洋経済』副編集長を経て、2008年7月~2010年9月、2012年4月~9月に同誌編集長を務めた。2012年10月証券部長、2013年10月メディア編集部長、2014年10月会社四季報編集部長。2015年10月デジタルメディア局東洋経済オンライン編集部長(編集局次長兼務)。2016年10月編集局長。2019年1月会社四季報センター長、2020年10月から報道センター長。
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