河川敷で「闇部活」続けたバレー強豪校の大問題 自粛要請を無視した「中学日本一」の衝撃実態

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河川敷に舞った黄色と青のバレーボール。その異様さに指導者は気づかなかったのだろうか(写真:miodrag ignjatovic/iStock)

親を駆り立てたのが進学なら、顧問をコロナ禍の闇部活に駆り立てたのは「大会」の存在だったに違いない。

「花道を飾る」「有終の美を」

気持ちはわかるが、子どもたちが万が一「コロナで命を失うことがあっても練習したい」と言ったとしても、そこを「君たちのアスリートとしての人生はまだまだこれからだ。今やれることをやっていこう」と諭すのが教育者の役目ではないか。

部活動による「パワハラ自死」も起きてきた

「もし、闇部活が真実なら、断じて許されるべきではない。このような指導者は子どもを中心に、自発的に取り組む本来の部活動の目的を理解していない」

そう憤るのは、宮城県仙台市在住の弁護士、草場裕之さんだ。2年前に岩手県立不来方高校(紫波郡矢巾町)男子バレーボール部の3年生が顧問のパワーハラスメントよって自死した事件を担当した。

スポーツ、教育界は2012年12月に大阪市立桜宮高校バスケットボール部主将だった生徒(当時17)が顧問による暴力や理不尽な指導を苦に自死した事件を機に「暴力根絶宣言」をした。

「もう7年経つが、その後に岩手の事件が起きたうえ、顧問のパワハラや長時間練習といったブラック部活はなくならない。このバレー部顧問も勝利至上主義者だろう。自分が勝ちたいがために子どもを利用しているのではないか。大会ありきの価値観しかない部活で勝たせる顧問を崇め、その顧問がトップに立つ学校のヒエラルキーを変えなければ、同じことが起きるだろう」と話す。

狂気の部活は、子どもを危険にさらす凶器にさえなりうる。アフターコロナの部活の在り方を今一度真剣に議論する必要がありそうだ。

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文藝家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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