被災地の用地問題解決には抜本策が必要 シリーズ用地買収③ 民主党・階猛氏に聞く

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――復興事業での用地取得について、どのような問題認識をお持ちですか。

平地が少ない三陸地方では、被災した市街地の大半が災害危険区域に指定され、住宅の再建ができない。そのため、移転先の高台での用地買収や、町づくりの前提としての防潮堤をより強固なものにするための土地確保が必要になる。その際に大きな問題として立ちはだかっているのが、所有者不明、相続登記未了などの問題を抱える土地の扱いだ。自治体は用地取得に多大なエネルギーを費やしているが、既存の法制度ではなかなか進まない。

――土地収用という方法もあります。

確かに、土地収用は強制力を伴う手続きではあるが、権利者を探し出したうえで交渉して同意が取れなかった場合に行うため、土地収用手続きの申請に至るまでの手間は任意の売買交渉と変わりがない。加えて、申請された案件につき、各県に置かれた収用委員会が審査して収用を認め、自治体が土地を取得して工事を開始するまでに通常は1年から1年半ほど時間がかかる。50戸未満の防災集団移転促進事業などでは、そもそも土地収用が認められていないという問題もある。

まもなく与野党合意の法案が成立

――このような問題を解決する方法は。

二つの方法がある。一つは、土地収用手続きの途中で例外的に工事着工を認める「緊急使用」という制度を使いやすくすること。これについては、与党側と野党側双方から3月25日に議員立法が提出され、与野党協議によって一本化された法案が4月17日に衆議院を通過した。連休前には全会一致で成立する見込みだ。もう一つは、より抜本的な問題解決を図るため、従来の土地収用手続きの枠組みを超えた新たな収用手続きを設けること。こちらは4月2日付けで、「生活の党」と共同で衆議院に提出した。その際、法案の筆頭提出者を務めた。

――間もなく成立する法案のポイントは。

5戸以上50戸未満の防災集団移転促進事業なども土地収用の適格事業にするほか、「緊急使用」が可能となる期間を従来の半年間から1年間に伸ばした。

――それによって抜本的な問題解決になりますか。

従来よりも緊急使用が使い勝手がよくなり、工事の開始時期が早まるだろう。ただし、土地の権利が移転するのは、従来通り収用委員会が収用裁決をした時期なので、もし1年の緊急使用期間の間に収用裁決に至らなければ、工事をやめなくてはならないというリスクがある。また土地収用手続きを申請する自治体は、対象となる土地の権利者などを記載した土地調書を作らなくてはならないが、その事務負担も引き続き残る。

 

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