被災地の用地問題解決には抜本策が必要 シリーズ用地買収③ 民主党・階猛氏に聞く

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――4月2日に提出した法案では、そのような問題は解決されたのしょうか。

復興事業用地について、従来の土地収用手続きよりも自治体の申請事務負担を軽減し、早期の権利取得を可能にするための新たな収用手続きを設けた。土地の利害関係者が異議を述べる機会を保障し、収用を申請する自治体に補償金をあらかじめ納付させることを条件に、各土地の権利者と権利内容の調査が確定する前に土地の所有権や使用権を自治体に移転し、早期に工事に着工できるようにした。岩手県や沿岸部の自治体、弁護士会などの意見も参考にしながら、議員立法で法案を作成した。

抜本改革狙った法案の特徴

――実際の手続きはどうなるのでしょうか。

まず初めに事業者である自治体が特例措置の対象となる復興事業を盛り込んだ復興整備計画を告示する。復興整備計画を策定する過程では協議会の開催を義務付け、地域住民など土地に利害関係を持つ人の意見をきちんと聴く。そのうえで、市町村が既存の収用委員会とは別に新たに県知事の下に設ける「用地委員会」に対し、「権利取得裁決」の申請をする。申請する段階ではもちろん、その後のいかなる段階でも申請する自治体は土地調書を作る必要はない。

申請がなされると、その内容は2週間公衆に縦覧し、その間に異議申し出がなければ、自治体は補償金見込額を納付して用地委員会の許可を得ることで直ちに工事に着工できる。異議申し出があった場合でも、用地委員会は各土地の補償金額を確定し自治体に納付させた上で、土地の所有権や使用権を自治体に取得させる。これが「権利取得裁決」だ。遅くともこの時点で土地の所有権などは自治体に移るので、後は自由に工事を進めることができる。土地の権利を失った個々の権利者への損失補償額については、用地委員会で半年以内に権利内容を審査し、「補償裁決」によって確定させる。用地委員会は、既に自治体から納付されている補償金を各権利者に分配する。

収用委員会と別に新たな組織を設ける理由としては、土地収用手続きの場合より簡易な申請を受理して迅速な審査で結論を出さなければならないことや、権利取得裁決と補償裁決という二段階の採決を行わなければならない点で、従来の収用委員会とは業務内容が大きく異なっているためだ。
 

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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