コロナでも「客トラブルゼロ」台湾そごうの秘訣 非常事態で見えた、店と客の「望ましい関係」

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なお、「遠東SOGO」の対応がうまくいっていることは、売り上げ面からも見て取れる。

小籠包で有名な「鼎泰豊」にも客足が戻ってきていた(写真:筆者撮影)

台湾でお正月シーズンに当たる2月は、前年同月比で30%ほど売り上げが落ち込んだ。3月は15〜20%マイナス、台湾のデパートにとってトップクラスに稼ぎ期である母の日シーズンが15%マイナス。5月は土日が多いとはいえ、ついに前年同月比並みと、徐々に売り上げは戻りつつあるという。日本の百貨店など比べれば、かなり健闘している数字と言える。

今年の3~5月にかけ、台湾でも巣ごもり需要が伸び、そごうの家電売り場でも、ゲーム機やマッサージチェアなどの売れ行きが大幅に伸びたという。

「これまでインターネットに接触してこなかった層までが、オンラインで消費することに慣れたことは大きな変化です。そして、不要不急の買い物はしなくなりました。私は今年が台湾の“不要不急の買い物はしない元年”だと見ています。ソーシャルやオンラインをより強化することは必須です」

と播本氏は締め括った。

防疫は両者の協力あってこそ成り立つ

本土における新型コロナウイルスの新規感染者が56日連続でゼロだったことから、台湾では防疫に配慮しながら日常生活に戻る「防疫新生活」が6月7日からスタートした。

夜市やスーパーなどでの試食も解禁され、イベントも人数制限なしで実施できるようになる。国内旅行を促進すべく、政府から宿泊補助などが出るという。官民が一体となって防疫を最優先に早々にコロナを封じ込め、成功してからすぐに経済の回復へと動いている。

日中の気温が30度を超え、人混み以外で人々はマスクを外して歩くようになってきた。久しぶりに道行く人々の笑顔を見かけたときには感動してしまった。

「防疫はサービス提供者側だけではなく、サービスを受ける側の協力と信頼があってこそ成り立つ」ということを、台湾は証明しているように思える。そしてその背景には、政府の適切な対応と情報発信があったことも、強調しておきたい。

近藤 弥生子 ノンフィクションライター

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こんどう やえこ / Yaeko Kondo

2011年より台湾・台北在住。オードリー・タンからカルチャー界隈まで、生活者目線で取材し続ける。東京の出版社で雑誌編集を経たのち、駐在員との結婚をきっかけに台湾移住。現地デジタルマーケティング企業で勤務後、独立して日本語・繁体字中国語でのコンテンツ制作を行う草月藤編集有限公司を設立。台湾での妊娠出産、離婚・シングルマザーを経て、台湾人と再婚。著書に『オードリー・タンの思考』『オードリー・タン 母の手記「成長戦争」』『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』『台湾はおばちゃんで回ってる⁈』がある。

ブログ:「心跳台灣」

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