ロケ場所探しから警官のご機嫌取りまで……低予算の映画をプロデュース、撮影現場ドキュメント《ハリウッド・フィルムスクール研修記11》

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撮影4日目

再びパサデナのレストランへ。この日はロサンゼルスでは珍しい大雨で、クルー一同ずぶ濡れになりながらトラックからの機材出しを行います。

パサデナという街は映画関係者から“厄介”な街として知られており、撮影において、さまざまなルールが存在します。今回も、「レストランが商業地域にある」という理由で撮影の間中、警察官を雇うことを義務づけられました。彼らの時給はわれわれ持ちで、合計1500ドル程度の出費。

加えて、1月に有名な「ローズパレード」(全米を代表する新年行事で毎年100万人以上の観客が集まるお祭り)が開催されるため12月は厳重警備時期、という訳のわからない理由で、機材用トラックをいっさい道に止めてはならないとのお達しも。トラックが近くに止められなければそれだけ機材の積み下ろしに時間がかかり、撮影時間が削られてしまいますし、特に雨の日は死活問題です。

当日監視に来た警察官とがっちり握手し、笑顔でコーヒーやサンドイッチを振る舞いながら、「ちょっとだけ、道にトラック止めてもいい??」と懐柔するのも私の仕事です。

そんな努力の甲斐(?)もあってか、撮影も順調に進み、予定どおりのカットをすべて押さえることができました。

撮影5日目

この日はまた新しいロケーションに移動です。ロサンゼルスのダウンタウン(高層ビル群で有名なオフィス街)近くの住宅街にある一軒家を使用し、主人公が1人目の標的にするちょっと奇妙な億万長者の部屋を撮影します。

1800年代に作られたクラシックな一軒家に、家具や絵画、彫刻などの高価に見えるものを大量に運び込み、監督のイメージする部屋を作り上げるのは美術監督(プロダクション・デザイナー)の仕事です。今回私はアート分野の超名門・UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)大学院で映画・舞台美術を学んだ友人にこのポジションを依頼しました。


撮影風景、中央は役者に演技指導をするドイツ人女性監督

また、ハリウッドには「プロップ・ハウス」という、小物や家具等をレンタルする会社がいくつもあります。その中で最大規模を誇るのがユニバーサルスタジオ。3階建ての巨大倉庫に40万点のアイテムがあり、ここにないものはないのでは? と思わせるほどの品ぞろえです。

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