ロケ場所探しから警官のご機嫌取りまで……低予算の映画をプロデュース、撮影現場ドキュメント《ハリウッド・フィルムスクール研修記11》

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 ピストルはもちろん本物の弾ではなく空砲ではあるものの、武器の取り扱い免許を持った専門家を雇うなど、安全に万全を期すのもプロデューサーである私の役割です。

2日間の休日

徹夜明けからの2日間、撮影はお休みです。「始まったばっかりなのにもう休むのか?」と思われるでしょうが、これには米国俳優組合(SAG)のルールが関係しています。

SAGでは「5日間撮影したら、次の2日間は連続で休日を入れなくてはならない」というルールがあります。われわれの撮影は計6日間ですので、連続で撮影することはできず、どこかで2日間の休日を入れる必要があります。

これに加えて、「12時間ルール」というものも存在します。俳優は前日の撮影終了後から、次の日の撮影まで必ず12時間の休憩が与えられなくてはいけません。このルールにのっとると、徹夜明けの次の日には朝から撮影することはできません。

こういったルールを考慮すると、2日間の休日はここで取らざるをえない、という結論に至ったのです。アメリカ映画協会付属大学院(AFI)はSAGと特別協定を結び、SAG所属俳優への最低賃金支払い(通常、日給700ドル程度)を免除してもらっていますが、同時にSAGのルールは厳しく守る義務があるのです。

アメリカのフィルムスクールでも、SAGに所属しないアマチュア俳優を使って、ルールを気にせず撮影に集中できる学校もあり、監督志望者の中にはAFIの環境は堅苦しく感じる人もいます。一方プロデューサーという立場の私はより現実社会に近い環境に身を置けてよかったと感じています。

撮影2日目

2日目は学校から車で5分程度の距離にある一軒家を借りて、主人公の3人目の標的となるキャラクターの家を再現しました。

撮影準備の中で、プロデューサーにとっていちばんたいへんな仕事が「ロケーション探し」です。その中でも、一見簡単そうに見える「家探し」が実は最も難しかったりします。映画の教科書にも、「仲の良い友達の家は撮影に使うな」というアドバイスがあるくらい、どんなに気を使っても撮影後には必ず何らかのダメージがあります。


主演女優と男優の2ショット。男優は以前紹介した北村昭博

そんなリスクを承知で今回われわれに自宅を撮影用に提供してくれたのは、自身も俳優の卵としてハリウッドを目指すアメリカ人。私のクラスメートの友人というつながりで、快く我々のオファーを受け入れてくれました。

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