リアルタイム決済は別システムで対応も 全国銀行協会・平野信行会長に聞く

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ひらの・のぶゆき 1974年三菱銀行入行。2012年より三菱東京UFJ銀行頭取。13年より三菱UFJフィナンシャル・グループ社長。14年4月1日から全銀協会長。

世界各国の銀行システムは、24時間365日即時決済ができる態勢へ変わりつつある。世界的に高い品質レベルを誇ってきた日本の銀行システムは、この流れに対応できるのか。全国銀行協会の平野信行会長に聞いた。

──決済システムのリアルタイム化が世界で進んでいる。即時決済が平日の8時半から15時半に限られる日本はどうするのか。

英国では2008年、シンガポールでも今年から24時間365日の決済システムが稼働している。いずれも英国のソフト会社が開発した、比較的単純なシステムを使っており、いくつかの制約がある。まず、この新システムに参加している銀行の数は限られている。取引金額も上限があり、比較的少額にとどまる。英国では、既存システムでの決済が7割以上を占め、新システムは2割ぐらいと聞く。

日本でもリアルタイム決済のニーズがあることは承知しているが、それがどれくらいあるのか。金融機関の事務作業や勤務体系など、態勢整備もよく考えなければならない。また、日本には手形交換制度があり、(手形が決済できなくなる)不渡りの判断はどのタイミングですべきか。日本固有の事情も含めて総合的に調査・研究を進めている。

──その対応は、全国の銀行や信用金庫、信用組合などをつないだ既存の全国銀行データ通信システム(全銀システム)で行うのか。

全銀システムは8年ごとに更改をしており、次のタイミングは19年。そこではIOSCO(証券監督者国際機構)が定める新しい国際決済システムの基準に準拠するような、高いレベルの安全性、信頼性を実現する。

併せて、機能性の向上も図る。金融EDI(エレクトリック・データ・インターチェンジ)という、決済情報に商取引の情報を付加するシステムへの需要もある。流通業界はすでに金融EDIのフォーマットを持っている。

ただ、この対応を1300の金融機関が参加する巨大な全銀システムで行うべきかどうかは検討が必要だ。コストに見合った効果を金融機関が得られないということになってもよくない。国内外の調査や今後の需要動向、コストも勘案して望ましいシステムを作っていく。

──必ずしも一つのシステムですべての機能を備えるわけではないのか。

それも一つのオプションだろう。英国は二つのシステムがある。日本も24時間対応や金融EDI対応のシステムは、全銀システムと別に開発することも考えないといけないかもしれない。ニーズのあるところに、さまざまな工夫をして応えられないか、頭を柔らかくしてチャレンジすべきだと思う。

(撮影:今井康一 =週刊東洋経済2014年4月12日号

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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福田 淳 東洋経済 記者

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ふくだ じゅん / Jun Fukuda

『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などを経て編集局記者。

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