森トラスト「ホテルほぼ休業」に踏み切った事情 伊達美和子社長が語るコロナ「本当のリスク」

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――森トラストの自己資本比率は2019年3月末時点で38.3%、現預金が867億円でした。地域の中小ホテルと比べて経営体力のある森トラストだからこそできた休業だったのでは。

ここ数年間、いざという時に必ず経営を持続できるよう、体力をつけることを重視してきた。具体的には2014年3月期に26.2%だった自己資本比率を約12%高め、キャッシュリッチを志向し、安定してキャッシュフローを生み出すオフィスをはじめとする賃貸関係事業と、ボラティリティ(収益の変動)のあるホテル事業をバランスよく組み合わせてきた。

近年成長が著しいインバウンド需要が収縮しても、不動産としての資産価値が維持されるよう、一定の集客が見込める立地を厳選し、ホテル以外に転用できるかどうかも重視してきた。

東京オリンピックや大阪万博などの影響で建築費が高騰する中、コロナが発生する前から無理に投資せず、開発を先送りした案件もある。ここ数年、多くのホテル開業を開発し、今後も複数の開業を計画してこれたのは、平時からこういったリスク回避を徹底してきたからだ。

今年夏までの復活がカギを握る

――賃貸関係事業でも空室率が上昇し、それに伴い賃料が減額するなど、安定収益源ではなくなるリスクはありませんか。

伊達美和子(だて・みわこ)/1971年生まれ。1996年慶応義塾大学大学院修了。長銀総合研究所を経て1998年森トラスト入社。2011年に森観光トラスト(現・森トラスト・ホテルズ&リゾーツ)社長。2016年6月に父である森章会長の後継として社長に就任(撮影:今井康一)

現在、キャッシュフローが厳しいのは商業系のテナントで、賃料の支払い猶予や減額などの相談が非常に多く寄せられている。新規での入居を考えている顧客の間にも様子見感が広がりつつある。

ただ、われわれはホテルにこそ力を入れているものの、ショッピングセンターなど商業施設の割合が非常に少なく、大きな影響はないとみている。

――コロナの影響によるホテル事業への影響額はどれくらいになりそうですか。

2月のリゾートホテルはシーズンオフで、それほどコロナ影響は大きくなかった。一番の打撃は3月の春休み需要が減ったこと。客室稼働率は前年の約30%くらいに落ち込んだ。

まだ(影響額についての)集計はしていないが、前半が好調だった前2020年3月期決算は予算ギリギリ。2021年3月期は最初からよくない状態でスタートを切るので、コロナが長引けば長引くほど、影響額は拡大する。

感染拡大が抑えられないままでホテルを再開しても、客室稼働率が低迷し、結局赤字のままだろう。目下、観光業にとって重要なのは、今年の夏までに事態が収束し、復活できるかどうかだ。

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