創業家以外から初起用、ニトリ社長交代のワケ 27期連続増益の超優良企業に転機

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事業会社の新社長に就任する白井俊之氏(左)と会長になる似鳥昭雄氏(右)

ついに後継者が決定か。家具・インテリア製造小売り大手のニトリホールディングスは3月28日、グループの中核事業会社ニトリの社長に白井俊之・取締役専務執行役員(58)を起用する人事を発表した。5月9日の株主総会後に就任する。創業家の似鳥昭雄・現社長(70)は代表権のある会長に就く。白井氏はホールディングスでも代表取締役副社長に昇格する。創業家以外でニトリホールディングスおよびニトリの代表権を持つのは、白井氏が初めてだ。

似鳥氏は3月28日の決算発表の席で、自身が2014年3月に70歳になったこともあり、今後の経営を後進に譲ることを示唆。白井氏について「リスクを取って改善していこうとする。成果を出しており、バランス感覚も高い」(似鳥氏)と評価する。

ニトリホールディングスの前2014年2月期の経常利益は634億円。27期連続で増収増益(営業利益ベース)を達成した。全商品のおよそ85%を国外から調達する同社にとって、2012年末から急激に進行した円安局面は大きな逆風だった。商品担当役員である白井氏は、供給業者や材料の原産地の変更、高価格帯商品の拡充などの施策を打ち出し、利益を改善した。今回の人事は、そうした点を評価したものといえる。

海外出店を加速

社長交代の理由はそれだけではない。ニトリの店舗数331(2013年2月末時点)のうち、9割以上が国内。さらなる成長に向けては、国内だけでなく海外への進出も重要になる。

同社は2007年に台湾に出店し、昨年は米国に初進出した。中国にも今期中に出店する。目標とする店舗数は2022年で1000で、そのうち300が海外となる計画だ。似鳥氏は「海外展開の足がかりを私がつくる。国内は白井に任せたい」と話す。

ただし、似鳥氏は「(白井氏は)今のところニトリホールディングスでは副社長にとどめている。ほかの人が出てきたら変える。実力で奪い取って欲しい」とも語っており、後継者を完全に決めたわけではないようだ。

ニトリの3月の既存店売上高は、消費増税前の駆け込み需要で前年同月比27%増と絶好調。ただ4月は反動減で「3月の倍近い落ち込みがある」(似鳥氏)とみており、少なくとも前半は厳しい環境になる。消費増税の落ち込みを乗り越え、28期連続で増収増益を達成できるのか。白井新社長の手腕が試される。

(撮影:梅谷秀司)

秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年4月から再び『週刊東洋経済』編集部。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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