日銀短観下振れも、底堅い日本株 日経平均終値1万4791円、海外はリスクオン

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4月1日、海外のリスクオンが日本にも押し寄せている。3月日銀短観は下振れ、消費増税の影響が想定以上に大きい可能性を示したが、日本株は底堅さを維持している。都内の証券会社前で2月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 1日 ロイター] -海外のリスクオンが日本にも押し寄せている。3月日銀短観は下振れ、消費増税の影響が想定以上に大きい可能性を示したが、日本株は底堅さを維持している。買いを入れたのは海外勢だ。

イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長がハト派方向に発言を「修正」したと受け止められ、早期の米利上げ観測が後退。本来ならドル/円の下落要因だが、強気ムードが広がるなかで米株高を好感し、円安も進んでいる。

<海外勢の日本株買い>

3月の日銀短観は6月の先行き予想を含めて市場予想を下振れた。消費増税の影響を懸念する企業側が弱めの数字を出すことは予想されていたが、市場見通しを上回る企業側の警戒感が示されたことで、日本株には嫌気要因になってもよかった。

短観について、市場では「物価を基軸にした日銀の金融政策運営のため、円債市場にはほとんど影響はないだろう」(みずほ証券・チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏)と指摘されており、日銀追加緩和への期待が高まったわけでもなかった。

しかし、日経平均<.N225>はマイナス圏に沈んだ後、いったんプラス圏に浮上するなど底堅さをみせる展開となっている。買いの主体は海外勢だ。「信託銀行など国内勢から昨年と同じように年度当初の利益確定売りが出ているが、海外勢の買いがしっかりと入り底堅い。世界的なリスクオンムードが日本株にも広がっているようだ」(大手証券トレーダー)という。

非公式データだが、1日の寄り付き前の外資系証券6社経由の注文状況は売り2290万株に対して買い3650万株、1360万株の買い越しとなった。差し引きの買い越し規模は3月19日の1570万株には届かなかったが、買いだけでみれば3月25日の3560万株を超えて今年最高を記録している。

早期の米利上げ観測が後退

海外勢のリスクオンの強まりは、海外要因が大きいとみられている。明確なポジティブ材料が出たわけではなく、中国経済の減速懸念など懸念材料も残っているが、ウクライナ情勢が小康状態となり、年初からのリスク警戒モードを転換させやすくなった。4日発表の3月米雇用統計に向けて、米経済指標の改善期待も強まっている。

投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)ボラティリティー・インデックス(VIX指数)<.VIX>は13.88まで低下し、約1カ月ぶりの低水準。リスク回避のマネーが流入していた金市場も、前月半ばから調整局面に入っている。

このところ米金利上昇懸念もくすぶっていたが、31日のイエレン発言で早期利上げ懸念は一服。これも投資家にリスクオン・ポジションを積み上げやすくさせている背景だ。

イエレン議長は、議長として初の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の会見で、量的緩和終了から利上げ開始までの期間は6カ月程度になるだろうと述べ、市場では「思っていたよりタカ派の印象が強まった」(国内投信)との見方が広がった。

だが、同議長は31日の講演で、米労働市場のぜい弱さを強調。「意識的にハト派方向に修正した」(T&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏)との受け止めが多い。

米利上げ観測の後退はドル安/円高材料だが、外為市場では、リスクオンによる米株高の方を好感。ドル/円は103円台前半をキープしていることで、日本株を支える要因になっている。

3月から4月にかけては、米国では税申告に合わせた株式売却の一巡や、税還付などもあり、株高になりやすい需給的なアノマリーがある。「セル・イン・メイ(5月に株を売れ)」の格言は、その時点で株価がピークを付けていることが多いということを前提にしている。こうした需給的な妙味も海外勢を強気にさせているようだ。

ただ、あくまで海外要因のリスクオンであることには警戒が必要だ。昨年は4月4日に黒田日銀の「異次元緩和」が発表され、日本株はそこから再加速したが、今年はまだ「期待」どまり。消費増税という昨年にはなかったネガティブ要因もある。アベノミクスに対する海外勢の評価も昨年ほど高くなく、海外情勢の変化一つで、日本株に対する姿勢が変わってしまう可能性もある。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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