「コロナ経営不振」は内定取り消し理由になるか 内定者が不利益被らないために政府も対応

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新型コロナウイルスの感染拡大で日本全体に閉塞感が漂っています。内定取り消しという事例まで出てきました。写真はイメージ(撮影:今井康一)

新型コロナウイルスの感染拡大が社会を揺さぶっている。感染防止のために濃厚接触を減らす観点から集会、会食、イベント等の自粛、学校の休校などが相次ぎ、経済活動が極端に萎縮。関連する企業はかなりの打撃を受けている。

大学教員である筆者はやがてこの4月に就職を予定している学生の内定取り消しという事態になることを危惧していたが、ここ10日間ほどでそうした報道も目にするようになってきた。当事者である大学などの卒業予定者とその家族は気が気ではないと思う。そこで、内定の法的意義と、内定取り消しの合法性について考えてみたい。

内定の法的位置づけ

新卒一括採用の場合、大学4年次の春以降に採用決定の通知を内々定あるいは内定として口頭等で受け、秋ごろに文書による正式な採用内定通知がなされ、入社に関する誓約書などを提出するといった一連のプロセスをたどるのが通常であり、「始期付解約権留保付労働契約」であると考えることができる。

この4月から入社を予定している学生は正式な通知を受け、誓約書などの書類を提出済みであろう。

労働契約とは、「労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを内容とする労働者と使用者の間の契約」であり、内定の通知をもってこの契約が成立したものとみなせる。ただし、実際に就労するのは卒業後の4月からということで、「始期」が付いている。

また、学校を卒業できなかった場合、やむをえない場合などには内定を取り消すことがある旨、内定通知で示されることが多いので、このような場合に内定を取り消す権利(労働契約の「解約権」)を企業側が有しているので「解約権留保」付ということになる。

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