三菱重工、造船事業の生き残り戦略で大誤算

大型客船の建造で600億円の巨額損失

三菱重工がアイーダ・クルーズ社から受注した大型客船の完成イメージ。2015年春の第1号船引き渡しを目指して、長崎造船所で建造作業を進めているが・・・

三菱重工業の造船事業が思わぬ窮地に立たされている。2011年秋に受注した2隻の大型客船で当初の計画よりも費用が膨れ上がり、600億円規模の追加費用が確実となったからだ。造船事業が韓国・中国勢との厳しい競争にさらされる中、独自の生き残り策として客船分野に再参入した同社だが、逆に巨額の損失を招く事態に見舞われた。今後の事業戦略にも大きな影響を及ぼしそうだ。

問題となっているのは、世界最大のクルーズ客船会社、米カーニバル社傘下の欧州アイーダ・クルーズ社から11年秋に受注した客船2隻。約3300人収容可能な大型クルーズ客船で、推計受注金額は2隻合計で1000億円前後に上る。昨年夏から建造に取り掛かり、1隻目は15年春、2隻目も16年春に引き渡す契約となっている。

顧客の仕様変更続出で、資材・設計費が膨張

3月24日に品川の本社で、交通・輸送部門を統括する鯨井洋一・常務執行役員、経理担当の野島龍彦・常務執行役員らが出席して、会見が開かれ、巨額損失を出した理由を以下のように説明した。

まず、客室内装や空調をはじめとする仕様の確定作業が予想以上に難航した。「仕様に関して、アイーダ・クルーズ社とわれわれの間で認識に大きな齟齬があった。最終的には要求を飲む形となり、当社が考えていたよりもかなり高級な仕様になった」(鯨井常務執行役員)。

しかも、先方からの指示で資材調達先も変更を余儀なくされ、十分な価格交渉をするだけの時間的な余裕がなく、グレードの高い資材を割高な価格で調達せざるを得なかったという。また、仕様の変更が続出したことで、設計の見直しも相次ぎ、資材費と設計費の双方が雪だるま式に膨れ上がった。

造船関連で数多くの技術者を有する三菱重工は、大型客船の建造実績がある唯一の国内企業。02年に建造中の大型客船が炎上する事故で巨額損失を被って以降は受注が途絶えていたが、11年ぶりに受注に漕ぎつけたのがアイーダ社向けの大型客船だった。

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