イタリア、スペインと感染急拡大の欧州事情 第一生命経済研究所の田中理氏の分析

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――アメリカのトランプ政権が欧州からの入国禁止を発表して、市場が大きく動揺し、欧州株が大きく下げました。

米国はモノの移動を制限しようとしているわけではないので、実はこの決定が欧州経済に与える影響はそれほど大きくない。経済的な打撃が大きいのはイタリアのような感染封じ込め策が欧州各国に広がっていくケースだ。すでにスペインは感染者が4000人を超え、サンチェス首相が非常事態宣言を行った。

――スペインも来週には1万人に達するとの見方を発表していますね。

スペインのマドリッドを中心に感染者が一気に増えており、心配される。先ほどのヘルスケアへの支出や病床数など医療関連の指標がイタリアとほぼ同じで、社会的なかかわり、家族や友人との接触度合いなども似ているので、対応を間違えると同じことが起きてしまう。スペインはフランスと並ぶ2大観光立国であり、フランスよりも地方色が豊かで、訪問先が多く、統計上も滞在日数が長いので、影響は大きくなる。

景気後退とその後の潜在成長率の低下を懸念

――景気の見通しは。

ユーロ圏の2019年10~12月期は前期比プラス0.1%で、製造業が世界的に不振で、サービス業が支えていたので、これから非常に厳しくなる。2月までは生産が改善しており、当初は1~3月期は辛うじてプラス成長になると思っていたが、急激にイタリアの活動が抑え込まれたので、マイナス転落は避けられない。他の国へも波及しているので、4~6月期もマイナス成長でテクニカルリセッションに陥る。

仮に、4~6月期に感染拡大が一服したとしても、通常の景気後退のあとのような、冷え込んでいた分を取り戻すV字回復は難しいのではないか。とくにイタリアは中小企業が多いので、倒産や失業が避けられない。もちろん、政府は資金繰り支援やローン・光熱費・税の免除などを政策として打ち出しているが、そもそも売り上げが立たなければやっていけない。

例えば、人の移動にしても、感染が終息したらすぐに遊びに行こうと思うかといえば、そうはならないわけで、観光産業もしばらくは低迷が続く。その過程で倒産はさらに増える。サブプライム後に下がった潜在成長率はさらに下押しされる懸念がある。

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