イタリア、スペインと感染急拡大の欧州事情 第一生命経済研究所の田中理氏の分析

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――EU(欧州連合)大陸内はシェンゲン協定で行き来が自由です。イタリアから欧州全土に拡大したと言えるのでしょうか。

潜伏期間を考えると2つのルートがあると思う。初期に、イタリアとの行き来があった人の感染が伝えられたが、それはそういう人たちを重点的に検査したためだ。欧州全体が観光立国でもあり、ビジネスの関係からも、中国との交流は多いので、他国にもすでに感染者がいたと考えられる。ドイツのバイエルン州などの感染が多いが、それがイタリアに近いせいなのか他の原因なのかは目下、調査中だ。

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加えて、EU域内の移動の自由があることも感染につながっているだろう。イタリア北部は、スイス、フランス、オーストリアなどと国境を接していて、スイスなどは物価が高いため、人々はイタリアでよく買い物をする。EUの観光客の内訳を見ると、圧倒的に多いのはEU域内からの訪問者だ。

例えば、イタリアの旅行者の50%はまず国内の旅行者、他のEUの国からが35%、次がアメリカからの4%強、その後が中国で3%弱、日本からは1%弱といった数字だ。EUは人の異動が激しいことが感染を広げやすい。イギリスや北欧諸国で感染が広がった1つの発端はイタリアのスキーリゾートを訪問した人だ。

EU全体が観光立国、打撃は大きい

――イタリア全土で移動が制限される事態になりました。

外出や都市間の移動は仕事や健康上で必要な場合に限られ、当該理由を記した自己申告書を携行しなければならなくなった。イタリアの南北間格差があって、北部よりも南部の医療システムが貧弱なため、南部への感染をくい止めたいという事情がある。

【2020年3月16日16時15分追記】外出や都市間の移動について、初出時から、より正確な表現に改めました。

――観光産業への打撃、経済への影響も大きくなりそうですね。

観光および周辺産業まで入れると、かなり依存度が高い。今後、お互いに移動がなくなると観光収入が激減する。夏のほうが観光客は多いが、少なくとも3、4月は壊滅的で年間の収入の14%ぐらいある。観光、小売り、外食などは圧倒的な影響を受ける。

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