新型コロナ「検査不足」の日本が直面するリスク 世界随一の高齢国でなぜ検査は進まないのか

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国際保健福祉大学の感染症教授である加藤康幸氏は、日本はSARSやMERSなどの過去の大流行ではほとんど影響を受けておらず、それが誤った安心感を与えていると語る。

「中国の隣国のうち、日本だけがこうした病気の管理経験がない」と同氏は述べ、新たな病気に対処するための「不十分な心構え」があったと付け加えた。

検査数を増やしすぎることへの懸念も

日本政府は当初、乗客、乗組員、および治療にあたる医療関係者の間でウイルス感染が急激に拡大したクルーズ船のダイヤモンド・プリンセス号に検疫所を設置したとき、その対応に対して激しい批判を受けた。

感染拡大が進んでいるという深刻な状況にもかかわらず、資源が限られているという理由から、船上の人々の検査を実施するのに時間がかかった。発熱症状のある乗客は、医師の診察を受けずに何日も船室で待機し、2週間の隔離期間が終了すると、日本政府はウイルスにさらされた多くの人々が追加の検疫を受けることなく、検査もせずに下船することを許可した。

専門家は、政府がウイルスのスクリーニングに関して適切なバランスを取る必要があったと話す。

検査数を増やしすぎると、国の医療制度が圧倒されるのではないかと心配する人もいる。大阪のりんくう総合医療センターの医師である倭(やまと)正也氏によると、大都市圏の病院はすでに軽度の症状を示す患者であふれている。患者の数が劇的に増加した場合、最も深刻な症例の治療を妨げる可能性がある、と同氏は語る。

「ほとんどの病院は、こうした患者を受け入れることに慣れていないため、救われるべき患者を救うことができない」と倭氏は話す。困難な症例によって医療従事者が「疲弊する」可能性があるという。「こうした患者が多い場合、病院で重篤な状態の高齢患者を治療するのがより難しくなる」。

(執筆:Ben Dooley記者, Motoko Rich記者、Makiko Inoue記者)

(C)2020 The New York Times News Services 

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