新型コロナ「検査不足」の日本が直面するリスク 世界随一の高齢国でなぜ検査は進まないのか

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日本は近隣諸国に比べて新型コロナウイルスに対して危機意識が薄いうえ、検査が進んでいないのはなぜなのか(写真:ロイター/Athit Perawongmetha)

都心にある高齢者介護施設「マイホームはるみ」は目下、厳戒態勢にある。ボランティア、サービス提供者、さらに、時には利用者の家族でさえも、新型コロナウイルスの拡散を防ぐために、施設に入ることは許可されていない。

従業員はマスクを着用し、絶えず手を洗い、あらゆる場所を消毒するなど、危機感は施設全体に広がっていると、副所長である岩崎くみ氏は話す。これは死活問題だ。

日本で死亡者が多いのは80代

ウイルスは、はるかに高い割合で高齢者を死に至らしめる。日本全国に感染が広がっており、高齢者の感染率は世界で最も高い。全国で報告されている症例数は230人に上り(3月1日時点)、死亡した11人のうちの多くが80代だ。世界的には約3000人が死亡し、死者の大多数は中国人である。

人口の高齢化が進んでいる韓国やイタリアなどのほかの国々も、ここへきて感染者数が急増しており、深刻な課題に直面している。この2カ国は、専門家が推奨するとおりのことを行っている。韓国とイタリアは、より多くの人を検査するために迅速に行動を起こし、感染の疑いがある人を治療し、隔離するようにした。

ところが日本政府は、数週間様子を見守った後、より積極的な行動をとり始めたばかりである。中でも注目すべきは、1カ月間の休校だ。ただし、この対応は、重度の肺炎を発症することが多い脆弱な高齢者ではなく、感染時に軽度の症状しか示さないか、症状がまったく表れない若者を対象としている。

その間も政府は、新型コロナウイルスの検査に対する厳しい制限を維持しており、高齢者の感染に対する恐怖を増幅させている。

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