日本は2%成長ムリなのに予測に盛り込む虚構 楽観シナリオに深刻な問題が隠蔽されている

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したがって、2010年の「成長戦略シナリオ」で描かれた将来像より悪化しています。

なお、将来は、「成長実現ケース」であれば、2027年度に黒字化することになっています。

以上で見たように、2020年の財政状態は、2010年の「成長戦略シナリオ」が描いたほどは、改善していません。

ただし、2010年の「慎重シナリオ」よりはよくなっています。

なぜでしょうか?

大きな理由は、税収が伸びたことです。名目GDPの伸びは2010年の「慎重シナリオ」に近いものであるにもかかわらず、国の一般会計税収は、「成長シナリオ」の見通しをも上回るものなのです。これは、企業利益が増加し、法人税が伸びたためです。

ただし、つぎのことに注意する必要があります。

1. 2020年度の税収見通しは過大であって、実現できない可能性が高い
2. 企業利益の増加が将来も続くとは期待できない(実際、製造業の利益はすでに大きく落ち込んでいる)

なお、一般会計歳出総額は、2010年に見通されたのよりは、大幅に減っています。これは、金利が低下した結果、国債費が大幅に減少したためです。

低金利で危機意識がなくなっている

財政収支試算は、現在、ほとんど注目を集めていません。

これは、「財政収支問題は深刻でない」と考えている人が多いからでしょう。

確かに財政収支は深刻化していません。しかし、それは、プライマリーバランスが改善しているからではありません。上で見たように、国債費の負担が著しく軽減されているからです。

そして、そうなるのは、長期金利が著しく低い水準に抑えられているからです。

上記2020年財政収支試算によると、2019年度の名目長期金利はマイナス0.1%であり、2020年度から2022年度までは0%とされています。

しかし、実質2%程度の成長を考えると、いつまでもこうした状況が続くとは考えられません。いずれ長期金利は上昇すると考えざるをえないのです。

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