世論を操る懸念も「偽SNSアカウント」の脅威 正しい情報より伝達が早くて広い「偽情報」

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イギリスの国民投票の背後でいったい何が起きていたのか(写真:alexsl/iStock)

2020年1月9日、英議会下院は、イギリスが欧州連合(EU)から離脱するための関連法案を賛成多数で可決した。1月22日には上院でも承認され、翌日のエリザベス女王の裁可を得て成立。欧州議会の承認を得て、1月31日に離脱した。

EUから離脱するか残留するかの是非を問う歴史的な国民投票がイギリスで実施されたのは、3年半前の2016年6月23日である。離脱派が52%を占め、勝利を収めた。

実は、この国民投票の背後でソーシャルメディアを使ったロシアとイランからの情報戦が繰り広げられていたと言われている。EU離脱を促す投稿や、テロ事件に便乗して政治の不安定化を狙うような煽情的な投稿があり、大手メディアに取り上げられることさえあった。ただし、ロシア政府は選挙への介入を否定している。

離脱賛成の大量投稿

ウェールズのスウォンジー大学とカリフォルニア大学バークレー校の研究者たちは、イギリスのEU離脱について言及していた15万6252個のロシア語のツイッターアカウントを調べてみた。ほとんどは国民投票の数日前に作られたアカウントだった。古いアカウントも調査してみると、もともと注目していたのはEU離脱ではなく、ロシアのクリミア併合など別の話題であった。

研究結果によれば、国民投票直前、これらのアカウントは英国のEU離脱に急に関心を持つようになり、使う言語もロシア語からなぜか英語に切り替えた。投票日の2週間前には1日当たり1000件の投稿だったが、48時間前には4万5000件に急増し、投票日翌日に結果が発表されたときは少し下がって3万9000件になり、その後投稿数は激減したという。

こうしたアカウントが作業効率化のために活用していたのは、ロボットを語源とする「ボット」と呼ばれる自動ツイートツールだと言われている。ボットを使うと、自動的に決まった時間になるとツイートできるほか、特定のキーワードに反応したリツイートも可能だ。

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