福島原発、廃炉へ「プラス思考」で 凍土遮水壁は、来春までの完成目指す

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3月10日、福島第1原発の所長を務める小野明氏は、安定化・廃炉への取り組みについて「(今後は)廃炉に向かって30─40年、プラス思考にメンタルを変えていく」と強調。写真は同原発で同日撮影(2014年 ロイター/Toru Hanai)

[大熊町(福島県) 10日 ロイター] -東京電力<9501.T>福島第1原発の所長を務める小野明氏は10日、ロイターなど外国メディアの取材に応じ、同原発の安定化・廃炉への取り組みについて「これまでは事故の後始末という印象が強かったが、(今後は)廃炉に向かって30─40年、プラス思考にメンタルを変えていく」と強調。

汚染水問題解決の切り札である凍土遮水壁は来年春までの完成を目指すと述べた。また、将来の核燃料取り出しではロボットの活用が不可欠であり、海外からの技術導入も必要になるとの見解を示した。

福島第1では今年2月、満水状態のタンクに汚染水が誤って移送されたことで100トンの漏えいが起きた。東電は、操作ミスの可能性を含めて原因を調査中だ。昨年6月に就任した小野氏は「今まで人の目だけの対応に頼っていたが、(電気的な安全装置を付けた)インターロックを使って、何かあったら(自動的に)止める仕組みを作る。今までと同じような問題は起こらない」と述べた。

凍土遮水壁、来年春までに完成めざす

東電はこの日、福島第1原発事故から11日で丸3年を迎えるに当たり、外国メディアに第1原発1、2号機中央制御室などを公開。汚染水問題における4つの「抜本対策」のひとつである凍土による遮水壁の実証に向けた工事現場も報道陣に示した。

凍土遮水壁は、1号機から4号機の周囲約2キロを、地面を凍らせることにより壁を作り、地下水が建屋に侵入して汚染水を発生させているメカニズムを食い止めることが狙いだ。小野氏は「来年の3月、4月までに凍土壁を作り上げようと、実証試験の結果を踏まえながら検討を進める」と述べた。

タンク増強ペースも加速

汚染水から62種の放射性物質を取り除く多核種除去設備(ALPS)の増設について、小野氏は「今年秋くらいから、増設したアルプス(ALPS)の運転に入ると思う」と説明。汚染水貯蔵タンクは、2016年3月までに総容量を80万トンに増設する予定で、現在1カ月間に1.5万トンのペースで総容量が増えているが「4月からは4万トンに増やせるように検討している」という。

ただ、タンクの増設は無尽蔵にはできない。汚染前の地下水が建屋入る前にくみ上げて、海に放出する作戦(地下水バイパス)や、凍土遮水壁の運用開始などの抜本対策で、汚染水の発生量そのものを減らす必要がある。

汚染水をALPSに通しても、現状ではトリチウムだけは取り除くことができない。このため政府は、トリチウム以外の放射性物質を取り除いた水を基準値以下に薄めて海に放出する対策を検討している。とはいえ、恒常的な風評被害を懸念する地元の漁業者から、強硬な反対が起きる可能性は否定できない。

東電の「原子力改革監視委員会」の委員長を務めるデール・クライン氏(元米国原子力規制委員長)は、小野氏の後に外国メディアの質疑に応じ、「大量の汚染水を原発の敷地に保管しておくのは持続可能な方策ではない。トリチウムに関しても海洋放出について一定の基準があるので、それを満たした上での放出は考え得ると思う」と述べた。

土壌浄化、ロボット技術を渇望

小野所長は、30─40年にわたる廃炉を成功させるために必要な技術として、土壌浄化やロボット技術を挙げた。廃炉作業における最難関の工程が、溶け落ちた核燃料の取り出しで、ロボットの活用が不可欠になるが、開発のめどはついていない。小野氏は、「外国からの技術も必要になると思う」と語った。

(浜田健太郎 編集:田巻一彦)

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