保育園に入れない杉並区、中野区の実情 認可園申し込みの半数が落選、職場復帰も困難に

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異議申し立てに動いた中野区の母親たち

子どもを認可保育園に預けることが認められなかった母親たちが、区役所に異議申し立ての書面を提出する抗議行動を起こしている。

「育児も仕事もさせて」「保育園を直ちに増園を」

2月25日の午後、子ども連れの母親たちが、東京の中野区役所に押し寄せた。母親たちによる異議申し立ては2月21日の杉並区に続くもので、対応した区の担当者に保育園の増設など緊急対策の実施を求めた。

地方自治体による保育実施義務は、児童福祉法第24条で定められている。つまり、自治体(市区町村)は、親の仕事などやむをえない理由がある場合、保育園で子どもを保育しなければならない。ここでいう保育園とは、国が定めた認可施設だ。そのうえで、保育に対する需要の増大などやむを得ない場合には、家庭的保育事業やその他の適切な保護をしなければならない、というただし書きが設けられている。

そのことから、自治体には認可保育園を整備する義務があるうえ、「どこにも預け先がない待機児童がいることは違法状態」(村山祐一・元帝京大学教授、日本保育学会保育政策研究委員会委員長)とされる。厚生労働省も「待機児童の存在は、児童福祉法第24条に規定されている適切な保育が行われていない状態」(保育課の担当者)とみなしている。ところが、東京都内ではここ数年、認可保育園への入園申し込みの急増に施設の整備が追いつかず、認可保育園に入園できない子どもが激増している。

日本共産党東京都議会議員団の調べによれば、回答のあった都内18区25市3町村で認可保育園には入れない子どもの数は2万6090人にのぼった。全体では、申しこんだ子どもの37.4%が入れなかった。それだけでなく、保育士の配置が少なくて済むことから、代替策として設けられた東京都独自の認証保育園にすらも入園できないケースも少なくない。

杉並区の場合、認可保育園の入園申し込みは2006年の1175人から2014年には3257人へと約3倍に増加。一次選考で認可保育園入園の内定を得られなかった子どもの数も14年2月時点で1867人に達している。中野区でも1632人の入園申し込みに対して14年2月時点で786人が認可保育園入園への内定を得られなかった。さらにここへ来て、保育料が割高な認証保育園や無認可施設ですら入りにくくなっている。

中野区に住む戸谷茉奈さん(31)は、生後11カ月の長男を認可保育園に預けることができず、途方に暮れている。夫婦共働きで自身は週4日勤務だが、第一次選考で中野区が定めた「指数」(点数)が足りずに涙を飲んだ。現在は母親に週に1~2日、子どもの面倒をみてもらう一方、友人宅に預けたり、保育園の一時保育で何とかやりくりしている。

だが、「このまま保育園が決まらないと、仕事を続けることも難しくなる」と語る。戸谷さんは第9希望まで挙げて認可保育園の申し込みをしたが、すべて落選。認証保育園1カ所、保育ママ(家庭福祉員)4カ所も申し込み中だが返事は得られていない。

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