誰が悪い? ハーバードが戦う「男女格差」 ニューヨークタイムズ報道で波紋

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昨年、ニューヨークタイムズ報道で大問題となったハーバードビジネススクールの「男女格差」とは?(写真は、女性入学50周年を記念し、丸一日男女格差問題についてディスカッションされた日のもの。筆者撮影)

「ハーバードビジネススクール(HBS)で最近、いちばん話題になった出来事は?」。そう聞かれて、真っ先に思いつくのが、「男女格差」をめぐる論争だ。

創立から100年を超えるHBSだが、前半の半世紀は男子校だった。1963年に初めて女子生徒を受け入れ(当時は8人だけだった)、その後、徐々に女子比率が高まり、今では40%超になった。ところが、女子生徒が入学して50周年に当たる昨年、ニューヨークタイムズが「ハーバードに残る男女格差問題」というスクープ記事を報道。全米に大きな波紋を呼ぶことになった。

ニューヨークタイムズ報道、そして学長の謝罪へ

発端は昨年9月。ニューヨークタイムズが「Harvard Case Study: Gender Equity」と題し、HBSがいまだに女性にとって、不公平に厳しい環境であることを報じた。記事では、授業は主にファイナンス出身のアグレッシブな男子生徒が牛耳り、自己主張を不得意とする女子生徒は発言を控える傾向にあると取り上げられた。また、女性教授や女性が主人公となるケーススタディがあまりにも少ないことを挙げ、共学になって半世紀経った今でも女性にとって厳しい環境であると説いた。

この記事が報道された直後、HBSのMBAプログラムを統括するムーン氏から、全生徒宛てに5ページに及ぶ手紙がメールで配信された。そこには、「HBSのような有機的で複雑なエコシステムを、短時間の取材で理解することは不可能で、メディアがある程度、省略や誇張して報じるのは仕方ない」と書かれていた。そのうえで、「HBSが男女格差問題に取り組んでいるのも事実であり、コミュニティの一員である生徒一人ひとりが意識を変え、理解を深め、行動していかなければならない」と説いた。

その後しばらく、キャンパス内では男女格差が話題になることが多かった。男女格差を話し合うディナー会やディスカッションセッションが企画された。しまいには、ニューヨークタイムズの記事を書いた記者を招き、完全オフレコのQ&Aセッションも行われた。

今年1月、ディーン学長が、北カリフォルニアで行われたHBS関連のパーティで、「HBSはその歴史の中で必ずしも女性に対して公平な対応できたわけではなかった」とスピーチし、学長として正式に謝罪した。そのうえで、HBSが今後、出版するケーススタディのうち、女性の主人公の割合を現在の9%から、5年以内に20%まで伸ばすことを約束した。

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