第4回 海外漫画事情

武士道や華道、茶道、柔道、剣道、さらには芸者に忍者。海外で親しまれる日本の文化は幅広い。最近ではクール・ジャパンなんて表現も。
 しかしメインではないほうのカルチャーが浸透しやすく、そして面白い。一番裾野が広いと思われるのは漫画だ。そのままMANGAで通じてしまう。
 MANGAの発信地、文化の伝道師たる書店の日常で耳目にすることをいくつかお届けしたい。

東アジアの台湾は、もう日本と同じ。日本の発売日と時を同じくして中国語でも発売される。漢字タイトルに気がつかなければ、売場は日本の地方の本屋と変わらない。ちなみにエヴァンゲリオンは「福音戦士」、GANZは「殺戮都市」。なんかすごい。

シンガポールを始めとする東南アジアになると、中国語版と英語版が混在し、混乱に拍車をかける。華僑は中国語、そうでない皆さんはアメリカ仕入れの英語版。店頭で在庫を聞かれると、「日本語ですか? 英語? 中国語?」となる。そして中国語の場合はさらに台湾版と香港版で翻訳の毛色が違っていたりするらしいので、担当者の悩みは果てしなく、客の嗜好は幅広い。

中東まで来ると、漢字圏外なのでほぼ英語版のみ。基本的にアメリカやヨーロッパのサイトが情報源らしく、そちらで人気のタイトルがよく売れる。
 しかし、ここはイスラム教国。恋愛結婚どころか恋愛が存在してはいけない国で、恋愛コミックが売れているのはなぜか? 一生仕事をする必要がなく、豪邸に、高級車に、召使のいる生活を送りながら、学園コミックを買っていくのはなぜか? そこには深遠な何かが隠されているのかもしれない。

子どもの心を忘れないまま大人になって、子どもを連れてコスプレ。そんなオージーは大切なお客様です。

ご当地オーストラリアでもMANGAは当然人気。お客さんもスタッフも、着飾るのが大好き。本物の白人が中心なので地毛で金髪。漫画の世界を体現するというのは、平たい顔族の日本人以上に上手かもしれない。
 そうは言っても一般書店ではMANGAを取り扱わない。雑誌と同じく本屋では扱わないもの、とされているらしい。地元の大きな書店に行っても子ども向けのものが少々のみ、子どもの心を持った大人は相手にしてくれない。

流通は意外と複雑。日本の発売日を起点にして、アメリカ、台湾、香港など各地の発売日まできっちり抑える必要があり、さらに国によっては検閲というステップが入る。
 暴力に性描写、そして宗教的および道徳的な観点での検閲は、国ごとの文化に根ざすものなので、おろそかにはできない。
 「クレヨンしんちゃん」は主人公が親を呼び捨てにするということで、東南アジアでかつて発禁となっていたし、「課長島耕作」は女性関係がむやみと幅広いということで、同じく発禁。

想像力で読み込んでいくのが読書。ページを括れば想像力に導かれて、未知なる世界がそこには広がる。しかし個人には限界ある想像力という地平線の、さらに向こうの世界をイラストで描き出してくれるのが漫画だ。

日本の文学書をオマーン人に理解させるのは難しいが、日本の海賊漫画はオマーンの首都、マスカットで出会った少年たちにも大人気だった。
 メインカルチャーでもサブカルチャーでも、仕事を通じて文化交流に貢献したいという思いにおいて、本屋に国境はない。

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