福原愛が中国人のハートをつかめた理由 トップアスリートはグローバル社会の架け橋

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北京オリンピックの開会式で日本選手団の旗手を務めたのは、現在、卓球女子世界ランク9位の福原愛選手。中国卓球スーパーリーグでも活躍した彼女は、中国ではよく知られ、親しまれています。「瓷娃娃」(ツーワーワー、磁器のお人形の意)というニックネームは、愛らしくて、色白で肌がすべすべの容貌に由来します。

1988年、仙台市に生まれた福原選手は3歳から中国人コーチについて練習し、4歳の頃から中国での合宿を繰り返し、2005年にはスーパーリーグ・遼寧チームに参加しました。ここには世界チャンピオンの王楠選手が所属しており、大きな影響を受けたといいます。2008年5月、胡錦濤国家主席(当時)が来日して早稲田大学で特別講演を行った際には、「胡錦濤との卓球対決」に駆り出されました。そこでも彼女は普段どおり自然に振る舞って、胡錦濤と談笑し、ラリーの際にはスマッシュを決めさせるなど、大いに場を盛り上げてくれました。同席していた福田首相の影が薄くなるほどの立派な「文化大使」ぶりでした。

もうひとり取り上げたいのが、四元奈生美選手です。日本では「自前のコスチュームで試合に臨む、ちょっと変わった選手」程度にしか扱われない四元選手ですが、2010年3月30日、広州市で開催されたエキシビション・ゲームにおいて、黒地に赤い模様のワンショルダーのミニドレスで登場し、中国人の喝采を浴びました。新華社発行の英字新聞China Dailyは、「世界最強なのにイメージが地味な中国の卓球に、イノベーションをもたらすヒントを、美しい四元選手が示してくれた」とほめちぎっていました。

ハンパじゃない、福原愛の語学力

福原選手の卓球の技量はもちろん超一流ですが、中国語のレベルも驚異的です。中国では、テレビのインタビューでもネイティブと変わらない自然な中国語で受け答えしています。発言内容も人柄そのまま謙虚で飾り気がなく、巧まざるユーモアに満ちています。(http://www.youtube.com/watch?v=0j_y73aV4FE)

特に中国人から絶賛されるのが、「東北訛り」と言われるその発音。中国語は、文法の決まりごとが極限までそぎ落とされたシンプルなコトバですが、最大の難関は微妙で複雑な発音とイントネーションです。特に日本人には、日本語にない母音や子音の組み合わせに4種類の異なるトーンが加わるためたいへんやっかいで、中国語の学び初めに、まず発音で挫折してしまうことが多いのです。しかし、福原選手の発音は中国人が聞いても「東北出身の中国人が話している」と思うほど完成されています。試合後のインタビューやテレビ番組で彼女の中国語を聞いて、日本人に対する認識を新たにする中国人は多いと思います。

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