不気味に上昇する、金価格

安全志向や、米低金利の長期化観測

2月14日、不気味な金価格の上昇が続いている。年初からの世界的な株安で相対的な魅力が増したほか、足元では米国の低金利環境の継続観測が後押ししているという。写真はモスクワで1月撮影(2014年 ロイター/Sergei Karpukhin)

[東京 14日 ロイター] -不気味な金価格の上昇が続いている。年初からの世界的な株安で相対的な魅力が増したほか、足元では米国の低金利環境の継続観測が後押ししているという。

米低金利の長期化観測は、米国の経済や金融政策に不透明感が濃いなかで、やや強引に育まれた期待だが、新興国問題や中国の債務不履行(デフォルト)懸念などが浮上する中で「安全資産」としての需要も復活してきたとの指摘もあり警戒される。

<寒波なくても米経済減速との懸念>

金の需要が戻ってきた。13日のニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は7日続伸となり、4月物は中心限月終値ベースとしては昨年11月7日以来、約3カ月ぶりに1300ドルの節目を超えた。世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールド・シェアーズの信託金残高は、昨年から続いていた減少が止まり、約1カ月半ぶりに800トン台を回復している。

第1の要因は米低金利の長期化観測だ。市場では「年初に発表された12月雇用統計以来、米国の経済指標は市場予想を大きく下回るデータが続いており、米連邦準備理事会(FRB)は量的緩和の段階的な縮小(テーパリング)や利上げを進めにくくなった」(T&Dアセットマネジメントのチーフエコノミスト、神谷尚志氏)との見方が広がっている。低金利は利息の付かない金の相対的な魅力を増す。

経済指標の下振れは寒波による一時的な影響の可能性もある。ただ、前日発表された1月の米小売売上高では、全体が前月比0.4%減少となったのは寒波のせいだとしても、インターネット販売など寒波でポジティブ効果が出るはずの無店舗小売りもマイナス0.6%となった。市場では「ひょっとして寒波の影響を除いても米経済は減速しているのではないか」(国内証券米支局)との不安が広がっている。

米短期金利先物は上昇し、市場の利上げ予想時期は徐々に伸びてきた。10年米国債利回りはテーパリングが開始されているにもかかわらず、2.7%台と依然として3%以下の水準にとどまったままだ。ドル・インデックス<.DXY>は軟調で、80ポイントの節目に近づいてきている。ドルの下落は、ドルの代替資産である金の価格を押し上げる要因になる。

<米低金利観測には強引さも>

米低金利の長期化観測については、やや強引な面もある。米経済や米金融政策は現時点で不透明な点が多く、決定打と言えるような材料がないためだ。

米経済指標には弱さも目立つが、もともと1─3月期の米経済は昨年までの在庫積み増しの反動で減速するとの見方がエコノミストの間では多かった。予想外に悪天候が長引いているため、この影響は慎重に見なければならないが、2014年においては前年に景気を下押した税負担増や歳出削減といった緊縮財政からの影響が軽減されるというプラス効果が働く。

1月に発表された国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しでは、2014年の米成長率予想は10月の2.6%から2.8%に引き上げられたばかりだ。

11日のイエレンFRB議長の議会証言では、労働市場に対して慎重な見方を披露したものの、これまでのスタンスと変わるものではなく、テーパリングに関しても、経済に大きな変化がなければ粛々と続けていくことを表明している。

決定的な材料が見当たらず、米低金利は昨年進んだ債券から株式へのシフトの反動といった単なるポジション調整である可能性もある。BNPパリバ証券・チーフ債券ストラテジストの藤木智久氏は「米経済などの不透明さ自体が米低金利の背景になっている」と指摘している。

<「安全志向」の復活か>

一方で「安全資産としての金需要が再び増加し始めた」(国内投信)との指摘もあり、警戒が必要だ。

投資家の不安心理の度合いを示すシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ・インデックス(VIX)<.vix>は足元で低下しているが、今年に入り、新興国問題のほか、中国では債務不履行(デフォルト)懸念も浮上してきている。欧州債務問題は小康状態だが、ギリシャのような「火種」はまだ残っている。

「一時的に金に資金を逃がしておこうというニーズがあるようだ」とばんせい投信投資顧問・商品運用部ファンドマネージャーの山岡浩孝氏は指摘する。

中国はじめ新興国の経済は減速しており、実需が拡大しているとは考えにくい。米テーパリングが開始されるなかでの金価格上昇は、金融市場からのマネー巻き戻し懸念を後退させるが、投資家の「安全志向」復活が背景にあるとすれば、警戒は怠れない。

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