味の素 韓国食品大手の攻勢受け苦戦 今14年3月期の営業利益は二ケタ減益に

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縮小
グローバル化へ矢継ぎ早にM&A戦略を打つ伊藤雅俊社長(写真は昨年12月の東洋水産とのインドでの合弁事業の発表時のもの、撮影:今井康一)

「この消耗戦は味の素が降参するまで続くのでは」と味の素幹部は想定以上に長引く基幹事業の低価格競争に疲労の色を浮かべている。

食品大手、味の素の今2014年3月期の営業利益は610億円程度(前期比約14%減)に落ち込みそうだ。12年10月に子会社カルピスを売却したことによる今上期の収益剥落(前上期の営業利益には48億円寄与)は織り込んでいたものの、バイオファイン事業の飼料用アミノ酸の相場が大幅下落したことが想定外だった。

基幹事業の一つで想定外の利益縮小

この背景には韓国食品大手・CJ第一製糖との熾烈な価格競争がある。

飼料用アミノ酸とは、牛豚鶏などの一般飼料に不足しがちな必須アミノ酸を補うために配合されるアミノ酸だ。これによって、飼料効率の改善や成長促進が可能となる。近年、アジアや中南米での畜肉消費量の増加、飼料設計の近代化を追い風に需要拡大が続いている。

味の素は、飼料用アミノ酸の中で最も市場規模の大きいリジン市場で世界シェア約20%を占め、業界3番手に位置する。前13年3月期にはこの事業が営業利益712億円のうち135億円を稼ぎ出した。味の素では今後も市場拡大が見込めることから、基幹事業の一つに位置付けている。

しかし業界2番手の韓国食品大手・CJ第一製糖が今期に入り値下げによる販売攻勢に打って出たことで、相場が大幅に下落。14年3月期第3四半期期間(13年10月~12月)の市場価格は前年同期比3割減となった。味の素は価格競争を余儀なくされ、販売数量・販売価格ともに落ち込んだ。飼料用アミノ酸事業の第3四半期期間の営業利益は赤字に転落し、通期では100億円以上の減益と利益が縮むことが予想される。

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