ラグビーW杯の「テレビ中継」は盛り上がるのか 視聴率王者・日テレが抱く期待と不安

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日本テレビは他局と比べると、「多くのバラエティーが長寿化するなど安定した人気を保っている分、他ジャンルの番組でチャレンジしやすい」という状況にあります。

例えば、ドラマでは珍しい2クール放送に挑戦した「あなたの番です」、教師が生徒を人質に立てこもるショッキングな展開の「3年A組 ―今から皆さんは、人質です」、約30年前のヤンキー漫画を実写化した「今日から俺は!!」は、その最たるところでしょう。

スポーツ中継に関して日本テレビは、プロ野球・ジャイアンツ戦の放送を減らして以降、レギュラーのバラエティーを放送したほうが視聴率は獲れることもあり、他局より控えめな姿勢を貫いてきました。ここに来て「未知数なラグビーワールドカップのゴールデンタイム放送」という大博打を打てたのも、バラエティーという強みがあるからですが、もし失敗してしまったら今後のスポーツ中継には消極的になりかねません。

待望されるアイルランド戦のアップセット

だからこそ日本テレビの関係者たちは日本代表の躍進を願っているのですが、ロシアとの開幕戦以上にターニングポイントとなりそうなのが、28日に行われる2試合目のアイルランド戦。前回大会で2度の優勝歴を持つ南アフリカ共和国に勝ったときのようなアップセット(番狂わせ)こそが、ラグビーファン以外の層から注目を集める最大の方法だからです。

その点、今回の日本代表は、世界最高峰の司令塔・セクストンを擁する世界ランキング1位のアイルランドにどんな戦いを見せられるのか。選手たちは前回大会以上のアップセットを本気で狙っていますが、日本テレビとしても「勝ってくれる」と信じて本気のサポートを見せるでしょう。

ここでは異例の中継シフトを敷いた日本テレビのことを書いてきましたが、もちろん主役は戦う選手たちにほかなりません。ドラマ「ノーサイド・ゲーム」で描かれていたように、日本におけるラグビーのプレー環境は他競技と比べて優れているとは言えず、苦しい日々を過ごしている選手もいるようです。

だからこそみなさんは、彼らが自国開催という晴れ舞台で、自らの人生を変えるような活躍を見せてくれることを願い、応援してみてはいかがでしょうか。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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