「空白県」奈良にJR直通特急のニーズはあるか 9年ぶり復活、近鉄特急とは競合でなく共存

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JR西日本がPRに力を入れる「まほろば」はもう1つある。奈良から南へ、桜井を経て高田まで伸びる「万葉まほろば線」(桜井線)の活性化だ。この路線の愛称も、臨時特急と同じく2010年にデビューした。

同線と和歌山線では従来、国鉄時代の通勤形電車「105系」が主力だったが、今春に新型車両「227系」が運行開始。9月末に28編成計56両の投入が完了する。

万葉まほろば線の新型車両227系(左)。右の105系と置き換わる(記者撮影)

奈良公園周辺には、東大寺の大仏や春日大社、約300年ぶりに中金堂が再建された興福寺などの見どころが集中しており、外国人観光客や修学旅行の学生たちが押し寄せている。一方、県中南部の万葉まほろば線沿いには、まだまだ潜在的な観光需要がありそうだ。

同線沿線には日本最古の神社の1つで三輪山を「ご神体」とする大神(おおみわ)神社をはじめ、社寺や古墳が連なる古道「山の辺の道」があり、歴史好きに人気となっている。大神神社の占いで卸値が決められるという「三輪そうめん」は県を代表する名物だ。

新型車両で利用促進

森川大阪支社長は万葉まほろば線について「長期的に利用が減少傾向にあって今後も厳しくなることが見込まれているが、227系導入を機に鉄道の利用促進と地域活性化を図っていきたい」と力を込める。

万葉まほろば線の新型車両227系(記者撮影)

JR西日本は、おおさか東線の全線開業に続き、臨時特急「まほろば」や新型車両227系の運行を契機に奈良エリアの観光需要をテコ入れする考えだ。だが、現在、一大観光地で宿泊施設も多い京都や大阪市内から、追加料金がかかっても快適に移動したいというのであれば、近鉄特急を使うしかない。

近鉄は大阪難波と京都から近鉄奈良への直通特急を走らせている。より座席が広い「デラックスシート」を備えた「伊勢志摩ライナー」や「アーバンライナー」、2階建ての「ビスタカー」の車両で運行する特急もある。しかも、JRの奈良駅に比べ、近鉄奈良駅は市中心部に近いというアドバンテージがある。

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