トヨタ自動車が狙う、「脱AV家電化」とは? クルマが示す、「技術で世界に勝つ」ための条件(1)

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 「日本のお家芸」だったはずのエレクトロニクス産業が、グローバル競争で「連戦連敗」をするようになって久しい。
 では日本の製造業が、世界で勝つための条件とは何だろうか。
「オープン・イノベーション」を合い言葉に、仲介者として「世界の技術を結びつける」ことに奔走しているナインシグマ・ジャパンの諏訪暁彦社長が、今回から3回にわたり連載。トヨタ自動車、日産自動車、ホンダなどをモデルケースに、日本の製造業が技術で勝ち続けるための条件や、課題などについて明らかにする。
日本のクルマがこれからも勝ち続けるにはどうすればいいのか(2013年11月の東京モーターショーで、撮影:尾形 文繁)

「そろそろ技術力で勝ち抜けるビジネスモデルを見出したい」。メーカーの技術者なら、常にそう思うはずだ。だが半導体や液晶テレビの技術はすでに海外の企業に追いつかれ、コスト競争にもさらされる。

たとえばお掃除ロボットやタブレット端末など、すでにある技術の後追いをしたところで、「技術で勝ち抜く」ことは難しい。かといって、新興国市場でのコスト競争に勝つために、自分たちの生活コストを下げる覚悟もない。しかし、そもそも資源国ではない日本は、付加価値をつけることで今の地位を築いてきたはずだ。では技術で付加価値を付け、世界で勝ち続ける方法とはなんだろうか? 自動車のケースで明らかにしていきたい。

カーエレクトロニクスの未来はバラ色か?

最近のクルマで人気なのは、スバル(富士重工業)の「アイサイト」のような、自動停止まで行う「プリクラッシュセーフティシステム」(PCS)や、日産自動車の「アラウンドビューモニター」のような駐車支援機能だ。これらはまさに、エレクトロニクスとIT技術の結晶のような技術である。従来からあるカーナビやPCSのようなエレクトロニクス部品は、ハイブリッド車の場合、実にコストの5割近くを占めるというのだから、まさに「カーエレクトロニクス」だ。

車に欠かせないカーエレクトロニクスは、エレクトロニクスと自動車に強い日本にとって、産業を再興させるチャンスのようにも見える。しかし、このチャンスが「いつまで続くか」が、実は問題なのだ。

今では標準装備が当たり前となった音声案内型のカーナビは、1992年8月にアイシン・エィ・ダブリューが開発し、「トヨタ自動車」のセルシオに初めて採用された。当初は、「ドライバーの負担を大きく減らすことができる」のがウリで、クルマ自体の差別化にもつながった。当時のクルマが550万円だったのに対し、カーナビの価格が90万円ほどもしたのというのだから、その価値は一目瞭然だ。

次ページカーナビが、あっという間に普及したように・・
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