「投機的」へ格下げ、ソニーがぶつかった壁 話題の新製品はあるが、屋台骨がない
すぐに稼げるヒットなし
12年4月に就任した平井一夫社長は、製品への強いこだわりを持つ。たとえばハイレゾオーディオ戦略は、ハワード・ストリンガー会長・中鉢良治社長体制下で2年も塩漬けにされていた企画を平井社長が拾い上げたものだ。
当然、こうした新事業は先行投資がかさむ。平井社長は1月上旬のインタビューで「商品企画の現場は、失敗を恐れて収支を読みやすい実績のある製品を出したがる。しかしソニーの長所は、感性に訴えることができるよい音、よい映像を楽しめる製品を生み出す点にある。失敗を恐れず、リスクを取っていかなければならない」と説明。「リスクを取る」というフレーズを多用してみせた。
確かに、平井社長はリスクを取った種まきを積極的に行っている。出井伸之社長体制以降、ソニーのトップは製品開発の現場から離れた存在になっていたが、その状況を「古きよきソニー」の雰囲気へと変えつつあることは間違いない。新製品プロジェクトがいくつも立ち上がることで、開発現場の士気も上がっている。
が、言うまでもないことだが、こうした種まきを続けるためには、重要な大前提がある。赤字体質から脱却していることだ。今後とも家電ビジネスは厳しい価格競争を避けられないが、ソニーは何で稼いでいくのか。その点を平井社長に問うと、「他の収益源を確保しながら進めていく」との答え。「得意とする映像処理やイメージセンサー技術を生かせる、新たな事業領域(医療分野やヘルスケア、美容、農業)を中長期スパンで育てていく」というのが、平井ビジョンだ。
その一方、すぐに稼げるような「目先のヒット」が現れない点が、ソニーの悩みだ。全米家電協会は今年、情報家電の売り上げのうち、実に4割がスマホとタブレットで占められると予想している。そうした中ではソニーも、スマホ「エクスペリア」シリーズの販売シェアを引き上げ、屋台骨に育てていく必要がある。しかし、「モバイル事業で新たに加わる売り上げよりも、カメラ、テレビ、パソコンの不振による売り上げ減のほうがずっと大きい」(ソニー関係者)。
平井社長のビジョンを成り立たせるためには、国内工場の一層の削減など、一段のリストラによる損益分岐点の引き下げが不可欠なのかもしれない。
(週刊東洋経済2014年2月8日号〈2月3日発売〉 核心リポート02)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら