ただ、私は市長に就任してから、「ぜったいに協力しよう」と言って進めてきました。今から3~4年前、就任してすぐの頃、玩具メーカーが提供する「セイクリッドセブン」というアニメ番組の企画が持ちこまれたことがあります。
そのときに、担当職員は「嫌だ、嫌だ」と言いながら進めていましたが、実際に放送が始まると、深夜枠で視聴率があまりよくなかったにもかかわらず、一部のマニアが見ていて、かつ、そのアニメに由比ヶ浜にある商店街のお店がいくつか出てきて、そこに「聖地巡礼」と称してファンの人たちがドっと押し寄せてきたのです。もちろん、商店街の人たちも大喜び。
この現象は新聞でも取り上げられ、話題になりました。「こういうPRの仕方もあるんだ」、ということを職員たちもついに理解したようです。
――そういった新しいことに挑戦する一方で、古都ならではの難しさだと思うのですが、「街を開発しないでくれ」との声も、住民の間にはあるのではないでしょうか。たとえば、景観を維持するために取り組んでこられたことは?
正直なところ、行政としては、緑などの環境保全と街の開発、この軋轢につねに悩まされています。先ほど申し上げたように、鎌倉に移り住みたいと希望する人が増えている一方で、多くの住民は「緑豊かな環境でゆとりをもって生活したい」と考えていますので、そこがつねに政治問題化するのです。
鎌倉は10年前に「まちづくり条例」「(開発に関する)手続き基準条例(略称)」を作り、健全な開発を進めてきました。昨年12月には、鎌倉の独自の条例として「風致条例」が議会で可決されました。そこには宅地の緑化率を高めることや、自動販売機の色を統一することなどを盛り込みました。既存の「景観計画」により、ファストフードやコンビニなどの店舗には、看板の色を抑えてもらっています。
マンションについては、鎌倉駅周辺は高さ15メートルの規制をかけています。ほかの住宅地区では、風致条例で高さ8メートルの規制があるところも多いです。
自治体初! ゴミ対策と交通規制
――鎌倉を歩いていると、街中にゴミがほとんど落ちていなくて、たいへん驚きました。松尾市長は環境美化の一環で、「家庭ゴミの収集を戸別、有料化する」という自治体としては珍しい方針を打ち出されています。ただ、今年7月にも本格的に実施する予定だったのが、少しずれ込むようですね。
環境問題を考えていくうえでは、ゴミそのものを減らしていく必要があり、そのためには、家庭ゴミの戸別収集と有料化は有力な手段になると考えています。現在は、七里ガ浜、鎌倉山、山ノ内の3地区で実験的に実施しています。
全市での本格的な実施については、現在検討しており、戸別収集と有料化を実施する意義や、市の目指す方向を市民にしっかりとご理解いただくことが重要だと考えています。
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