「100万人を投獄」ウイグル人権問題の深刻度 元収容者が証言する強制収容の恐るべき実態

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新疆ウイグル自治区で大規模な強制収容が行われているというニュースは、昨年から世界各国のメディアで報じられている。外国籍を持っていたなど、特別な事情で釈放され、中国外に出国した元収容者の証言によるものだ。

2015年から3度にわたり収容所生活を経験し、現在はアメリカで暮らすウイグル人のメヒルグル・トゥルスンさん(29)もその1人。7月6日に明治大学現代中国研究所とアムネスティ・インターナショナル日本が共催し、都内で開かれた「ウイグル人証言集会」にネット中継で登場した。

電気ショックによる虐待で精神病院へ

メヒルグルさんはエジプトに留学していたウイグル人と結婚し、現地で三つ子を産んだ。2015年5月に里帰りした際にウルムチ空港で理由を告げずに拘束され、子どもとも引き離された。3カ月後に釈放されたとき、子どものうち1人は死亡していた。

7月6日の集会で証言したメヒルグルさん(記者撮影)

その後は当局の許可を受けたうえで就労していたが、2017年4月には「民族間の対立をあおった」として再び収容された。不衛生な狭い部屋に20~30人が押し込まれ、2時間ごとに交代で横になっていた。そのうえ尋問のため3日にわたり不眠状態に置かれたり、電気ショックによる虐待を受けたりした結果、8月末には精神病院に入院するに至る。それまでに同房者から9人の死者が出たという。

2018年1月には3度目の拘束をされ、「無期懲役か死刑」と脅迫された。しかし子どもたちがエジプト国籍だったため、同国政府の働きかけで奇跡的に収容所から出て、エジプトに渡航することができた。

出国の条件は2カ月後に中国に戻ることだった。出発にあたり、メヒルグルさんが「自分はなぜ何度も拘束されたのか」と係官に尋ねたところ、「ウイグル人だからだ」という答えが返ってきただけだという。

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