小泉進次郎という政治家を徹底分析してみる この10年の活動や成果を総括して見えた課題

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しかし、小泉さんは「カルチャーとビジネスは敵味方ではない」と言い、両者が一体化した発展の道を模索すべきだと強調します。そして、企業の農業への参入を積極的に推奨し、その環境づくりこそ国の仕事だと論じました(「本誌独占インタビュー! 小泉進次郎が挑む 「農政改革」三つの公約」『週刊ダイヤモンド』2016年2月6日号)。

彼は、「すべての農家を守ろうとして、すべての農家を守れなかった」という加藤紘一さんの言葉をたびたび引用し、農家への横並び政策を批判します。

日本の農業では、誰か1人だけ飛び抜けることは許されず、競争よりも協同が重視されます。その結果、農家は消費者のほうを向かず、ニーズに応えることができていない。

重要なのは、生産者起点の農政から消費者起点の農政へと転換を図ること。そうすることで、高品質の食品をつくり、世界と勝負する。世界市場で稼げる体制を築き、ブランド力をつけていく。

このような「攻めの農業」を確立することで、地方に稼げる仕事をつくることが可能となり、人口減少に歯止めをかけることになる。農業法人の経営を後押しし、従業員として就職する人を増やす。これこそが真の地方創生政策であると、小泉さんは主張します。

改革の3つのポイント

しかし、このような「儲かる農業」を阻害する存在があると言います。小泉さんがターゲットとしたのが農協でした。

彼は3つの点を改革ポイントとして挙げ、農協への厳しい姿勢を明示します。

まず第1点目が「農業機械・肥料・農薬・段ボールなどの生産資材が高い」という点です。

地方によっては、農業機械などを農協から買うよりもホームセンターで購入するほうが安く、農協を介することで、結果的に生産コストが上がってしまいます。そのため、農協の寡占状態を解体し、価格競争という市場原理を導入することで生産資材価格を引き下げる必要がある。これが小泉さんの主張です。

2点目は「農業金融」の改革です。小泉さん曰(いわ)く、JAグループの農林中央金庫は90兆円を超える貯金残高を持っており、規模でいえば3つのメガバンクの次(4番目)に相当します。しかも内部留保が多い。

にもかかわらず農業融資に回っているのは0.1%で、日本の農業振興に寄与していない。「ならば農林中金なんて要りません」「農業金融を見直して、本当に必要としている農家に資金が届くように整備したい」(前掲『週刊ダイヤモンド』2016年2月6日号)。

この農林中金解体論は、小泉純一郎元首相の郵政民営化政策と重なる点が多くあります。背後にあるのは、どちらもアメリカの存在です。債務国に転落したアメリカは、海外に貯蓄された富を狙い、アメリカに還流させる政策をとってきました。そこでターゲットとされたのが「ゆうちょマネー」であり、「農協マネー」です。

次ページ「農林中金解体論」は一気にトーンダウン
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