そろばんが「数字に強くなる」最適な手段のワケ 右脳トレーニングを目的にしている国もある

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そろばんを通じてそろばん式暗算や日常生活への応用力をつけるために、テクノロジーの力を借りるのは効果的です。日本でも教育とテクノロジーを掛け合わせる「EdTech」が注目を浴び、学習アプリが次々と生み出されています。

アプリで一体どのような学習が可能になるのでしょうか。使用例を1つ紹介したいと思います。そろばんを使ってそろばん式暗算を習得するには、「頭の中で珠をイメージする」というプロセスが必要不可欠です。しかし、子どもたちが頭の中で珠をイメージしながら計算しているか確認する手段がありませんでした。

思うように暗算力が伸びず、イメージせずに暗算していることに後から気づくケースがあったのです。アプリはいわば、子どもたちの頭の中を画面上に再現する手段でした。

計算プロセスを一つひとつ追える

簡単にいえば、アプリで子どもの計算プロセスを一つひとつ追えるようにしたのです。例えば、「1+8+6」という問題があったとき、そろばんの場合は「15」という答えが合っているかどうかで正誤を判断します。そのときに珠を正しく動かしたのか、動かさずに計算したのかは、ずっと見ていない限り先生はわかりません。

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しかし、アプリであれば、「1」を入力した段階、「+8」をした段階、「+6」をした段階のそれぞれで正誤を判定できます。答えだけが合っていても、プロセスが合っていなければ不正解にできる。

しかも、それぞれの操作スピードが遅すぎる場合は、時間切れにすることもできます。つまり、先生がそばで見ていなくても正しいプロセスでできているかを確認しながら、早く正確に計算するトレーニングを積めるようになったのです。

このほかにも多角的に暗算力を使って知識を定着させ、応用力を育むのです。教室で一斉に勉強する場合でも、アプリであればそれぞれの子どもの学習進捗に合わせて、これらのトレーニングを進めることも可能です。

テクノロジーを用いることで、子どもが効率的にそろばん式暗算などさまざまな能力を身につけることが可能になりつつあります。それがさらには、右脳の開発を通してほかの分野の能力を伸ばしたり、世界の人々とコミュニケーションする能力を育むことにもつながっていくのです。

山内 千佳 Digika 代表取締役会長

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やまうち ちか / Chika Yamauchi

神奈川県生まれ。東京女子大学文理学部数理学科卒業後、1989年日本興業銀行入行。1993年からCitibank東京支店にてデリバティブ商品のトレーディングと商品開発業務に従事する。2009年株式会社Digika設立。2011年に珠算教室「かるトレ」開校、2014年ママスタッフとともに「そろタッチ」考案。2016年国内特許取得。2017年日本eラーニング大賞最優秀賞受賞。2019年3月現在、国内外に約60教室、生徒数約1500名。 

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