「管理職1年目のリーダー」が陥りやすい失敗 大切なミッションは「チーム成果の最大化」

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その後、マットは私たちの話を実によく聞いてくれました。お客様や同業の経営者の元へも自ら足を運び、日本のビジネスについて必死に理解しようとしました。そして、宣言どおりの3カ月後、新たなビジネス戦略とそれに合致した体制の変更を発表します。

経営者や管理職が組織の成果を最大化させるためには、「質の高い決断」が必要です。マットは周りの人の話を真摯に聞く姿勢――「大きな耳」――と、自らどこにでも足を運ぶ行動力――「強靱な足腰」――で、日本法人社長という新しい役割における決断の質を高めようとしたのです。

決断の質を高めることは、課長やグループリーダーなどの中間管理職にとっても最優先課題です。

日本企業の場合、管理職への昇格は主に2つのケースがあります。1つ目は、チーム内の持ち上がりで昇格する場合、もう1つは違う部署から管理職として異動してくる場合です。外資系企業の場合は他社からヘッドハンティングしてくるというケースがこれに加わりますが、日本の場合はまだ少数派でしょう。

チーム内の持ち上がり昇格の場合、現場のことはよくわかっています。そこで、何をいまさら人の話を……と考えてしまいがちですが、そこに大きな落とし穴があります。プレーヤーとして個人の成果の最大化を行ってきたため、管理職に求められるチームの成果の最大化という視点が身についていないのです。

チームの目標設定や優先順位づけ、それに応じたリソース配分などは、一段、視座を高めてチーム全体を俯瞰するからこそできることです。にもかかわらず、すべてをわかっていると思い込んで自分基準の独断的なリーダーシップを発揮しようとしてもうまくいきません。優秀なプレーヤーではあっても優秀なマネジャーになれない人は、この点が理解できていないのです。

視座を高めてチーム全体を見るには、多面的な視点を手に入れることが効果的です。マットが行ったように、「強靱な足腰」でメンバーやほかのチームに自ら赴き、「大きな耳」でさまざまな意見に耳を傾けることで、管理職としての判断基準を自分の中に形作っていくことができます。

異動型リーダーが注意すべきこと

2番目のケース、他部署からの異動で管理職となった場合は、実務に関しては自分より部下のほうがよく知っています。一方、外からの視点を持っているがゆえに、新たに担当することになったチームの非効率性や無駄に気づくこともできます。

そこで、業務知識で部下に負けている分、別のところで存在感を示して、一刻も早く認めてもらいたいと考えてしまいがちです。しかし、ここにも注意すべき落とし穴があります。

どの組織にも特有のやり方や決めごと、風土があります。善しあしは別として、それらは理由があってそうなっているものです。それを理解しようともせずに、現状否定から入ったり、外のチームの常識をそのまま当てはめて変革を起こそうとしても反発されるだけです。

まずは、新しく部下となったメンバーの話をよく聞くことで、彼らと同じ内側の視点を持つことが重要です。そのうえで、外部の人から見たチームに関する声を集めることで、やはり多面的な視点を手に入れることに力を注ぎます。

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