北関東出身の彼女が地元と実家に絶望するワケ 「東京の大学に進学」は地元を捨てる事と同意

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地元では強固な出身中学のコミュニティーがある。そこに入っていないと一切の居場所がないという。同級生は幼稚園から中学校まで同じであり、3つの小学校があわさる中学校での人間関係が生涯続いていく。コミュニティーのメンバーになれる条件は「地元を離れないこと」「嫌われていないこと」で、羽田さんは両方に該当しない。仮に地元に戻っても、もう居場所はない。

父親も母親も地元の中学校同級生のコミュニティーは現在も継続している。北関東で生きるための条件の1つになっている。

イジメられていた羽田さんは、コミュニティーから排除された。22年間暮らしたが、地元の人間関係はほぼゼロで東京にも数えるほどしかいない。虐待する親、地元からの排除、本当に孤独なのだ。

「地元は弱い人間は切り捨てられちゃいます。人とのつながりがないと、あいつおかしいんじゃないかってうわさになる。だから東京の大学に行く人は地元を捨てる覚悟で行っている。優秀な人は地元を捨てて、どうしようもない人が残る。だから、みんな高卒で就職するんですよ」

短大を卒業して、車のディーラーで非正規で働いた。北関東には高卒や短大卒のまともな就職先はない。ほとんどが最低賃金で月給が設定され、手取りは11万円程度となる。親にいわれるがまま就職を決めて、実家から会社に通った。

「短大で初めて地元以外の人間と交流を持って、自分の家は異常で、子どもの頃から異常な経験をしたって自覚して、そこから精神状態がおかしくなりました。うつ病です。絶望感みたいなのがぬぐえなくて、どうしてもカラダが動かなかったり、死にたい気持ちがおさまらなかったり、今も治っていません」

ほぼ全員が就職する中で、短大に進学

父親は建築系の職人、母親はスーパーのパートで裕福ではなかった。両親は祖母から実家を相続し、なんとかギリギリ生活する状態だった。羽田さんはクラスのほぼ全員が就職する中で、短大に進学。母親の勧めで奨学金をフルで借りた。学費と交通費以外に数万円余る金額を借りたが、残りのお金は母親が家計に組み込んだ。

おかしいと心の中では思ったが、なにか口を出せば、暴力がはじまる。壮絶な暴力をふるう母親には絶対に意見はできなかった。

「奨学金は毎月15万円くらい。母親が通帳を持っているので、お金は私のところにはきません。結局、奨学金は元金で300万円以上になって、今は毎月2万円以上の返済があります。家賃も払えないのに払えません。催促状だらけ。就職しても通帳は母親が持ったので、私の手にはお金はきません。正直おかしいですが、地元では普通のことでした」

昨年の記事「拒食症の母の首を絞めた25歳の苦悩」も、母親によってがんじがらめにされ、給料はすべて奪われている話だった。場所は北関東である。

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