中食で静かなブーム、「生から惣菜」って何? 「生の食材」使った総菜を考案した陰の主役

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群馬県を中心に展開する食品スーパーとりせんは2016年に「生から惣菜」を導入。現在では全60店舗で販売している。導入2年目は前年比4倍増、導入3年目も前年比1.3倍増のペースで伸びている。好調な店舗では1日120パックが売れるほどの人気商品に成長した。

群馬県は猛暑になりやすく、夏場は生肉の販売が落ち込む傾向がある。火を使う調理が嫌われるためだ。生肉が売れ残ると収益上は大きなダメージとなる。「そこで、火を使わないメニューを模索していたところ、『生から惣菜』を知りチャレンジすることにした」(とりせん)。「生から惣菜」は冬場に人気が出そうなイメージがあるが、調理に火が不要であることから、春夏メニューの充実にも貢献する。

「生から惣菜」のメリットとして、商品を作りだめできることが挙げられる。特に野菜は天候によって価格が乱高下するが、安いときに仕入れて商品にして冷蔵しておけばコスト削減になる。また、ゴミ処理や生ぐさいにおいもなく、調理に手間がかからないため、魚の販売増加にも貢献する。

目標は売り上げ5倍増

エフピコは過去4年間に食品メーカーなど104社と提携してメニュー開発に取り組んできた。食品メーカーにとっても売り上げ拡大に直接結びつくので、その取り組みにも熱が入る。

エフピコはこれまでディスカウントストアや百貨店、レジャー施設などへの売り込みを検討したが、マンパワーが不足していた。今後は食品メーカーの社員がエフピコのカバーしきれなかった方面に販売を強化する。

今後の目標について同社ストア支援事業部の前田知司ジェネラルマネージャーは「『生から惣菜』がどの店でも当たり前に売られている状況を目指す」という。前田マネ-ジャーによれば、潜在的な需要を考えれば現在の5倍売れてもおかしくないとのこと。高齢化や一人暮らし世帯の増加が追い風となり、総菜は生からレンジで調理するのが常識になる日は近いかもしれない。

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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