男女の「結婚観」は平成の間でこうも変わった 婚姻数は16万組減り、離婚は11万組増えた

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さらに、平成とは「命が失われた時代」とも言えます。出生数は年間平均56万人も減りましたが、平成元年の合計特殊出生率は、戦後最低といわれて大きな社会問題となった「1.57ショック」の年です。それ以降、30年続いて出生率は低下傾向にあります。反面、年間平均34万人も死亡者が増えました。

『「少子高齢化で社会が破綻」は大いなる誤解だ』の記事にも書いたように、日本はこれから「多死社会」へと突入します。2023年から約50年連続で、年間150万人以上が死んでいくと推計されています。この年間死亡者数は、太平洋戦争時の年間死亡者数よりも多いです。

戦争もしていないのに、戦争中と同等の人が死ぬ国に、日本はなります。死亡者の大部分を占めるのが既婚高齢者であり、結果、死別による独身者が毎年増え続けていくことになるわけです。

非正規が増えると婚姻数が減る

そして、何より注目すべきは、年間当たり平均154万人もの完全失業者が増えたことです。平成は、まさに「仕事が失われた時代」だったのです。私は、「結婚は経済」であると考えていますが、失業者をこれだけ増大させた経済環境の悪化が、結婚やその先にある子育てに踏ん切れない状況をつくり上げたことは否定できません。

平成で激減したのは初婚同士の婚姻で、約2割減です。若者同士の結婚が減っています。婚姻率と男の非正規社員数の推移の相関を見ると、驚くべきことに相関係数はマイナス0.866と、強い負の相関が認められました。

つまり、非正規が増えれば増えるほど婚姻数が減っているのです。とくに、2001年以降は雪崩式に急降下しています。非正規雇用男性が約100万人増えるごとに、婚姻数が約3万組減るという計算になります。もちろん、非婚化は、非正規男性の増加だけが要因ではありませんが、「男が草食化したからだ」という抽象的な要因より確かなものと言えるでしょう。

高度経済成長期とは、「今日より明日はきっとよくなる」「今年より来年は給料が上がる」とみんなが信じられた時代でした。もっと言えば、10年後の自分の未来予想図が描けた時代でもあったわけです。結婚や出産を後押ししたのは、そうした未来への安心感だったでしょう。

決して昭和がよかったという話をするつもりはありません。しかし、人間とは環境に支配される生き物ですから、平成に入ってからの急激な未婚化、少子化というものは、そうした経済的不安の影響が大きかったと考えられます。平成とは、そうした「安心が失われた時代」だったと言えるでしょう。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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