「量産型」会社員はもっと自分を認めていい ひたすら「次の山」を登り続けるのが人生か

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若者のファッションでも男性の働き方でも、似た者同士の集団の中では、端から見ればよくわからない程度の微妙な差を競っています。しかし、競争を通じて満足感を得ようとすればきりがありませんし、そもそも誰しもつねに勝ち続けることなど不可能です。どのような職業であれ、働いていればよくわかるはずです。

自分なりの価値観を育む

定年退職した男性の間では、日本百名山に登るのがはやっています。一見するとのんびりしていいていいなと思われるかもしれませんが、残念ながら、趣味の領域でさえ制覇した山の難易度や数でマウントを取ろうとする男性が少なくないそうです。

受験、就活、そして、社内の出世レースという「山」をせっかく越えたのに、今度は文字どおり山に挑んでいるわけです。ちなみに、相談者さんが自分の到達した地点に見立てた筑波山は、奇遇にも日本百名山の1つであり、その中で最も標高が低く、初心者にオススメとなっています。謙虚な人柄が垣間見えますね。

ファッションでも仕事でも、他人からの評価ではなく、自分がどうしたいのかを基準にしないかぎり、「量産型」になるのは避けられませんし、競争にも果てがありません。もう40すぎなのですから、自分なりの価値観を育まないと人生の展望は開けないでしょう。

ただ、仕事をするうえで、「量産型」になること自体は悪くありません。子ども向けアニメの『機関車トーマス』でも、鉄道を管理するトップハム・ハット卿が、定められた運行計画どおりに仕事をこなすトーマスたちを「役に立つ機関車だ」と褒め称えてくれます。現実の仕事も同じです。相談者さんのように「目の前の仕事で精一杯」と言える真面目にコツコツと働く人のおかげで、社会が順調に回っているのです

「特別な人間であれ」というあおりを真に受ける必要はありません。問題なのは、せっかく自分なりに努力して大きな仕事上の目標を達成したのに、そのことに誇りを持てず、次はどうするのかと問われれば、不安になってしまうことだと思います。

残念ながら現実の企業における管理者のほとんどは、トップハム・ハット卿のように褒めてはくれないので、まずは自分の積み上げてきた実績を、自分がしっかり評価してあげてください。男性は定年まで働くのが「普通」という「常識」に覆い隠されていますが、20年も働き続けてきたということは、単にそれだけで十分に誇るべきことなのです。

一方で、20年も働いていると、社会がせいぜい広くても自分の所属している業界、あるいは、場合によっては勤めている会社になってしまうという弊害もあります。このままの流れに身を任せていては、定年までの間に、ますます会社人間化する一方です。自分なりの価値観を築くためには、新しい視点を取り入れなければなりません

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