ベトナム武者修行する日本学生が増える理由 超実践型の海外インターンが人材育成に効果

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ICC社では現在、世界6カ国12都市で海外インターンシップを展開しており、担当の吉澤ゆうが氏は、ベトナムを希望する学生の特徴としては将来駐在員や商社に就職を希望する人が多い傾向があるといいます。

神戸市外国語大学の学生(当時)で現在は総合商社で働くMくんもその一人。

ホーチミンの市場調査会社で、マーケティング・リサーチのインターンシップを経験しました。

「仕事の中で、つねにその行動をすれば目的は達成できるのだろうか、と考えることができるようになりました」

実際のプログラムの様子。立って話しているのがMさん(写真:株式会社ICCコンサルタンツ提供)

ベトナム人が特定の商品に対してどんなイメージを持っているのかをアンケート調査し分析するといった任務の中で、英語が通じないことも多いため、コミュニケーションを工夫して乗り切ったことが、彼の成長につながった様子です。

ホーチミンの日系企業は中小企業が多いため、経営層との距離も近くネットワーキング経験ができるのも魅力の1つ。業務時間外も日本とベトナムの交流団体が開催している交流イベントに参加したり、現地スポーツサークルに参加したりする学生も多いとのことです。

ICC社では、ハノイでもインターンシップ生募集を開始するなど、ますます希望者は増えそうです。

ベトナムでのインターンは効果的

近い将来シンギュラリティ(技術的特異点)が起こると言われている中、これからの社会に必要な人材育成の観点からも、学生時代にコンフォートゾーン(居心地のよい場所)から抜け出し、ストレッチゾーン(背伸びする場所)を経験できる環境づくりは必要です。

特に、より精神的にタフで「自走」できる次世代人材の育成という意味でも、ベトナムでの海外インターンシップは間違いなく効果的でしょう。

今回、2つの海外インターンシップを取材して、良質で効率のいいアウトプットは、「学生が主体的に考え挑戦できること」「プロの伴走者がいること」の2点が大切と感じました。今後は大学教育と連動して実習活動としての実施や単位化などの取り組みも視野に入れるべきではないかと筆者は考えています。

大川 彰一 留学ソムリエ 代表取締役

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おおかわ しょういち / Shoichi Okawa

日本認定留学カウンセラー協会幹事、TAFE Queensland駐日代表。1970年京都市生まれ。セールス&マーケティングに約10年間携わり、カナダに渡航。帰国後、留学カウンセラーとして4年間で約1000名以上の留学やワーキングホリデーに関わる。その後、米国の教育系NPOのアジア統括ディレクターとして約6年間、グローバル人材育成に尽力。海外インターンシップを大学の単位認定科目としての導入に成功、東北復興プロジェクト、アジアの国際協力プログラム開発にも携わる。現在は「留学ソムリエ®︎」として国際教育事業コンサルティングや留学の情報を発信。留学ソムリエの詳細はHPFacebookから。著書に『オトナ留学のススメ』(辰巳出版)。

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