4人の男性が「専業主夫」を早々に離脱したワケ 妻が稼ぎ、夫が家庭を守る「分業」は快適か

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福田さんはもともとエンジニアをしていた。流動性の高い業界で出戻り社員などもたまにいる。いずれ業界に戻ることもできるだろうと踏んで、来年は大学院に通いたいと考えている。英語の勉強をする時間を捻出するため、1歳の第2子も託児所に預けることにした。

第1子は5歳で無料で公立校に通うが、未就園児の教育費などは通常企業からの補助は出ないことが多く、福田さんの家庭で託児所の費用は週4回で月18万円ほどかかるがすべて自費負担。「妻が預けるのを許してくれている。感謝ですね」。

8時30分に妻と上の子が家を出て行き、9時に福田さんが下の子を託児所に連れて行く。皿洗いや洗濯、掃除などの家事をして、10時30分ごろからようやく自分の勉強時間になるが、お昼などを挟み、あっという間に子どもたちが帰ってくる15時台になってしまう。

「これまではなかなか子どもと一緒にいる時間が取れなかったので、大事な時間です。でもその時間と、自分のやりたいことをする時間のやり繰りをどうつけるかは課題です」

子どもたちが帰宅した後は夕飯の準備をして、自分の時間は夜までない。1歳の子は病気をして託児所に預けられず、家にいることも多い。「妻は忙しそうだけど、夜に仕事の関係者と飲みに行ったりとか、妻にはある自由が自分にはない、と感じることはあります」という。託児所を利用していても、この感覚。預け先がない乳幼児を抱える専業主婦はより強く感じている場合も多いだろう。

もちろん子どもの性格や年齢、親側の特性によっては、一日中子どもと過ごすことこそが幸せというケースもあるかもしれない。ただ、母親であれば誰でも子育てが得意かといえばそういうわけでもない。女性だからあるいは男性だからということではなく、夫の転勤やキャリアを支える主婦たちにも、ぜひ「自分時間」を確保させてあげてほしいものだ。

うつを発症し、妻が働くことに

ここまでは納得したうえで、自ら進んで主夫になった男性たちを取り上げた。前回記事(「大黒柱」として稼ぎ続ける男性たちの本音)ではさまざまな事情から妻が専業主婦になった事例を取り上げたが、主夫の側も同じように、「やむをえず」主夫になるパターンもある。

広島在住の片元さん(36)が専業主夫になったきっかけは、自身のうつ病発症だった。5年前、新潟に転勤となった直後に発症。最初はベッドから起き上がれないような様子ながらも、なんとか自宅でパソコンを開こうとしていた。そんな片元さんを見て、専業主婦だった妻がパソコンやスマホを取り上げた。

その時、下の子は2歳。妻は下の子どもが幼稚園に入れば何らかの形で働き始めることも考えていて、資格を取るなど準備をしていたところだった。

「もともと妻は私と同業他社で同じ営業の仕事をしていましたが、同じ領域では競合してしまうということで、やむをえず辞めていました」。そうした経緯もあり、片元さんの病気をきっかけに、専業主婦と稼ぎ主の役割を完全に入れ替えることにした。妻は正社員として営業を始め、片元さんが幼稚園の送り迎えをして過ごした。

「僕がいつ再発するかわからない状態で、妻は一人で稼がないといけないというプレッシャーがあったと思うので、申し訳なさはありました」

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