【産業天気図・放送・広告】広告出稿量の減少に歯止めかからず、08年度後半、09年度前半も「雨」。視界不良が続く

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予想天気
 08年10月~09年3月   09年4月~9月

放送・広告業界の2008年度後半は「雨」、09年度前半も前回(9月)の「曇り」予想から視界不良の「雨」へと悪化する。世界的な景気後退で企業の業績は日に日に悪化しており、広告出稿量の減少に歯止めがかかっていない。回復の兆しは一向にに見えず、各社とも当面は苦しい状況が続くだろう。
 
 08年4~9月期は増益となったのは、番組制作費の大幅削減に加え、通販事業の赤字縮小が進んだフジ・メディア・ホールディングス<4676>のみ。日本テレビ放送網<9404>が単体決算で上場以来初めて営業赤字に転落したほか、テレビ東京<9411>も最終赤字を計上するなど、在京キー局は軒並み厳しい決算となった。

また、広告代理店も大手3社(電通<4324>、博報堂DYホールディングス<2433>、アサツー ディ・ケイ<9747>)もそろって減益となった。その一番の原因は昨年後半から続くスポット広告収入の不振だ。番組と番組の間に放送される利益率の高いスポットはテレビ局にとって収益の柱。また広告代理店にとっても売り上げ規模は大きい。だが、東京地区のスポットの投下量が前年同月比で10%以上減少する月もあるなど、「ここまでの急激な落ち込みは過去にあまり経験がなく、かなり苦しい状況」(キー局幹部)だという。

このような環境下では、「(08年度)後半も回復は見込めない」(キー局幹部)という悲観的な見方が大勢だ。実際、米リーマン・ブラザーズ破綻による景況感の一段の悪化や、各社にとって大口広告主であるトヨタ自動車の今期業績予想の大幅下方修正などは放送・広告業界にとって悪材料だ。

さらに、ここにきて厳しくなっているのが、タイム広告収入の落ち込みである。今期前半は北京オリンピックなどの効果もあって、何とか踏ん張っていたが、後半は、実績のない新番組を始めとしてスポンサーがつきにくくなっており、テレビ局はどこも広告枠を埋めるのに苦労しているようだ。

足元の景況感を見れば、企業からの出稿量の増加は見込めず、09年度の回復も現状では期待できそうにない。となれば、民放キー各局は利益を捻出するためには番組制作費の大幅カットに手をつけざるを得ない。広告代理店も一段の経費抑制を進める必要がある。すでに、日テレは制作費を1000億円以内にまで削減する(今期見込み約1160億円)ほか、番組の大幅改編など抜本的な構造改革に着手すると明言した。程度の差はあれ、各社とも追随することになるだろう。ただし、番組制作費の削減は、視聴率の低下をまねいて広告収入が予想以上に減少するという危険性もはらんでいるため、難しい舵取りを迫られそうだ。
(中島 順一郎)

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